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松本大策のコラム
中国牧場奮闘記 その22~中国での失敗例に学ぶ~

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2015年11月9日

 中国での肉質改善を目指して日本から多くの指導者の肩が招聘されたようですが、僕自身が視察に行って見たり、いろんな関係者から伺った話では、なかなかうまくいかなくて引き上げているという例もかなり多いようです。

 その原因の1つは、和牛の感覚で肥育を進めてしまったことにあると思います。日本でも気高系の得意な農場が純但馬に手を出して失敗した例とかよく耳にするでしょ?
 ましてや、中国で手に入る素牛は、ほぼあちらの系統に様々な外国牛、たとえばシンメンタールやリムジン、シャロレー、アンガスなどを、無計画に交配した「雑種」です。
 しかも父親が分からないとか、生年月日が分からない、などは日常茶飯事です。
 そこは1頭1頭で、牛さんのタイプを見ながら、おおよその月齢の見当をつけて、それでも毎月現在の飼料や給与設定が合っているかの確認をしながら個別に調整しなければなりません。それはそれは骨の折れる仕事です。
 この点に関してはあちらの政府にも「登録制度」を作って、系統造成を行わなければならない旨を、幾度となくお話ししているのですが、こちらの意図がなかなか伝わらず、また紅花牛(僕の指導しているブランド)で、良い肉質が出ているのもあって(あ、ちょっと自慢(笑))、「まずは肥育で収益を出してから...」という回答ばかりが帰ってきます。もう少し大局的に問題を捉えていただければありがたいのですが...。

 もう一点は、「売り」につなぐことができない、というところでしょうか。僕が組んだクライアントは奇しくも中国有数の牛肉小売りチェーンに成長していきました(これは僕の功績じゃ有りません。何社長の努力と能力のたまものです)。
 ですから、「良い肉質」を作ると、きちんとした高値で販売できる体制ができました。しかしながら、一般のお肉屋さんでは、「牛肉は硬くて美味しくない」という先入観があるため、既存の牛さんと変わらない価格でしか販売できないケースも多いのです。そんな価格で日本人のコンサルタントフィーが出せるわけありません。
 この点は、僕は出会いから大変恵まれていたと言わなくてはいけません。

 さて、こちらは牧場に限ったことではありませんが、仕事は「人」です。信頼できる相手や仲間飼いなければ、技術もへったくれもありません。ここはとても重要だと感じています。

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