(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
桐野有美のコラム
寄生虫の話−12 「外部寄生虫も意識してみましょう」

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2007年5月2日

 ここまでは、内部寄生虫の代表として「消化管内線虫」をメインに書いてきましたが、御存知のように、寄生虫のすみかはお腹の中だけではありません。体の表面、つまり皮膚に棲んでいる、外部寄生虫のことも忘れてはいけません。
 これに関して、昨年、長崎県北部NOSAIの児嶋秀典先生が、とても興味深い実験をされていますので、ご本人の了解を得て紹介させていただきたいと思います。
 冬場の診療現場でよく見る、シラミ(ウシハジラミ)のせいで痒くて痒くて一日中体表を舐めたり、体を掻いたり、牛舎の壁や支柱などに体を擦り付けたりする牛。児嶋先生は、そんな「痒みのストレス」について調査されました。
 駆虫薬を投与してシラミを駆除したところ、体を舐めたり擦り付けたりする回数は約十分の一に激減!逆に、座って反芻している時間がグッと増え、反芻の回数はなんと70%も増加したのです!そして、駆虫前の糞便にはたくさん含まれていた「消化しきれずに出てきてしまった繊維」が、駆虫後は半分近くに減りました。つまり、痒みストレスが解消されてゆっくり反芻できたことで、消化がよくなり、食べたエサが栄養として吸収される割合が増えた、ということなのです。それだけ痒みというのは牛にとって想像以上のストレスであり、それによって農家さんは知らないうちに驚くような損失額を発生させているのです。

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