 |
中国牧場奮闘記 その18 |
コラム一覧に戻る
2015年8月31日
日本では、牛さんの管理は月齢を基準にして行いますよね?それから、牛さんの系統による違いも考慮します。
たとえば、気高系の強い牛さんならルーサン系の牧草を使い、早めにカロリーの高い配合を増飼していく、田尻系の強い牛さんならチモシーなどを中心に、カロリーも発酵速度も低めの飼料を、15ヶ月齢くらいまではゆっくりと増飼していく、みたいな感じです。
しかし、僕は中国の牛さんでは第一胃の性格とかまったく解りませんし、導入した牛さんの大半が生年月日も父親さえも解らないのです。
そこで、飼料の設計は、なるべく第一胃に負担のかからない、NDF(繊維、正確には中性デタージェントファイバー)を高くして、デンプン質飼料の粒状性も粗めに、トウモロコシの発酵速度も遅めにして、粗飼料は、入手のたびにチモシーやルーサンが変わるので、安定して使えるルーサンとイナワラを合わせて腹作りを開始しました。
こうやってようやく中国での牛飼いが始まったのですが、僕の頭では、かなり第一胃に負担の少ない飼料給与設定にしたつもりでしたが、数頭の食餌性蹄葉炎(第一胃のデンプンの発酵で発生する揮発性脂肪酸((牛さんのエネルギー源でお酢の仲間))を第一胃が吸収する速度が遅いために第一胃内が酸性化して起こる蹄の中の病気)が発生しました。

そこで、毎月の検診で「この牛さんは第一胃が弱いな」と判断した個体に関して、発酵ビール粕を飼料添加して第一胃の発酵速度を抑えながら、第一胃で発生するアンモニアを増やして「酸」を中和するようにして、給与設定を牛さんに合わせていきました(本当に綱渡りのようなものですね)。
発酵ビール粕ですが、ビール粕自体はチンタオビールの本拠地ですから、たくさんあるのですが、問題は日本で使うような「発酵ビール粕」がないことと、消費の時期に合わせて醸造量が異なるため、入手量が不安定なことでした。
そこで、自分たちで発酵ビール粕を作ることにしました。本当は、日本で使う「トランスバッグ」が真空化も容易で、できあがった後のビール粕を取り出した後も簡単に空気追い出すことができるので、それを使いたかったのですが、入手経路が解らなかったので、「大きな瓶」を使って、ビニールシートで空気を遮断して作りました、何回か腐らせてしまったのですが、人間次第になれるもので品質も安定してきました。


それと、中国の牛さんはタイプで異なるものの、おおむね和牛と異なり、発育が遅いと実感しました。この点は少し焦りました。
つづく
前の記事 中国牧場奮闘記 その17 | 次の記事 中国牧場奮闘記 その19 |