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桐野有美のコラム
寄生虫の話−4 「駆虫したら病気になった?」

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2007年3月7日

 次に、「駆虫したら牛が病気になった」という農家さんの話についてです。
 単純に考えたら、「たまたま駆虫を始めた頃に、タチの悪い病原体が持ち込まれたとか、気候が大きく変動して牛にストレスがかかったとか、飼料が変敗したとか、そういう偶然が重なったのでは?」とも言えるのですが、せっかくなのでここでは、本当に駆虫薬の投与が悪影響を及ぼしたとすればどんな現象だったのか、を推測してみましょう。
 まず、寄生虫とひとくちに言ってもさまざまな種類がいて、その分類によって効く薬が違います。上記のような訴えは、肥育素牛の導入時に背中にかけるタイプの駆虫薬を投与した農家さん何軒かで聞かれました。前回も少し触れましたが、この駆虫薬の成分(主にイベルメクチンやモキシデクチンなど)は、消化管内線虫というグループと、外部寄生虫(シラミ、ダニの仲間)というグループを殺すことができますが、それ以外の寄生虫には効きません。実際に牛の体にはいろんな種類の寄生虫がいますから、あるグループだけを殺すと、ときどき困ったことが起こると言われているのです。詳しくは次回。

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