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伏見康生のコラム
NO.322:熱中症にはキンキンのドリンクをその2

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2015年8月19日

では、
どれくらいの氷を、
どれくらいの温度と量の水に入れ、
どれくらい牛に飲ませたら、
どれくらい熱を下げる作用があるのか??
という、さっぱりわからないことだらけについてのお話をしたいと思います。

まず、不確定要素が多すぎますので第一の前提として、農場で蛇口から出てくる水を井戸水とし、その温度を15℃とします。
そこんとこを踏まえて、

Q1 15℃の水9Lに氷1kgを入れると水温は何℃になるか??
A1 5.5℃ (あくまで理論値、実際は空中や地面からの吸熱がある)

解説 前提として、
   1)1gの水の温度を1℃上げる熱量が1Cal
   2)氷が溶けるとき1gあたり80Calの熱量が必要

   15℃の水9Lの持つ熱量 15(℃)×9(L)×1000(g)=135,000Cal
   1Kgの氷が融解する際の吸熱量 80(Cal)×1(Kg)×1000(g)=80,000Cal
   氷が溶け、10Lの水が持つ熱量 135,000(Cal)–80,000(Cal) =55,000Cal
   55,000Calの水10Lの温度 55,000(Cal)÷(10(L)×1000(g))=5.5℃

   5.5℃は冷蔵庫でしっかり冷やしたビールと同じ温度です。キンキンです!!
 
 
Q2 5.5℃の冷水40L(15℃の水36Lに氷4Kg)を体温40℃、体重800kgの牛の胃内に投与したときの体温は何℃になるか?
A2 38.4℃

解説 前提として、
   3)ヒトの比熱は0.83である。ヒト1gの温度を1℃上げる熱量が0.83Cal
   4)牛とヒトの比熱を同等として計算する。ただし肥育牛は脂肪が多いので、
   実際の比熱は0.8以下になる可能性がある。(油脂の比熱は0.45) 

   40℃、800kgの牛が持つ熱量 40(℃)×800(Kg)×1000(g)×0.83
   =26,560,000Cal

   5.5℃の冷水40Lが持つ熱量 55,000(Cal)×4=220,000Cal

   水を飲んだ840kgの牛の熱量 26,560,000(Cal)+220,000(Cal)
   =26,780,000Cal

   その牛の体温(比熱は0.83で計算) 26,780,000(Cal)÷840(Kg)
   ÷1000(g)÷0.83=38.4℃

   理論上、しっかり解熱するはずです。

つづく

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