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数面麻子のコラム
第60話:寄生虫の話㊵

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2014年11月21日

 トリコモナスの話の続きです。前回もお話しした通り、感染した雌牛さんは生殖器に炎症や子宮蓄膿症を発症し、受胎不能になる場合も多いのですが受胎するものもあります。しかしながら、受精してから1~16週間のあたりで流産を起こします。早期の流産であるため、胎児は非常に小さく気づかないうちに流産していたなんてことも。それにより、この牛さんは種が付かないとか発情が不定期だと思われてしまうこともあります。
 流産胎児からは体中から虫体が検出されます。流産後の母牛の方は胎盤などの排出が終われば自然に回復に向かいます。
 雄牛さんに感染すれば、包皮炎を発症し膿様粘液の滲出などが見られますが、性欲に異常は見られません。雄牛の方は治癒が難しく、放置すると生涯虫体を保持することとなります。
トリコモナスに対する確実な治療薬は今のところ存在せず、短期間での完治は難しいため、感染した牛さんを淘汰する場合もあります。

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