(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
「第253話 「抗生物質あれこれ その6」」

コラム一覧に戻る

2011年11月17日

 細菌が肺に感染すると牛さんの免疫細胞との戦いが始まります。最初は好中球やマクロファージといった白血球が細菌と白兵戦を始めます。これらの白血球は細菌を内部に取り込んで消化し、細菌の情報をリンパ球に伝達して抗体を作るお手伝いをします。しかし、細菌のほうも黙っちゃいません。とくにMannheimia spなどの細菌は白血球をやっつけるロイコトキシンという外毒素を放出して徹底抗戦です。当然白血球は破壊されるのですが、この時破壊された白血球から様々なものが外に飛び出してきます。たとえば蛋白分解酵素や炎症誘発因子などです。この白血球の中から出てきた物質がなんと肺の組織を破壊してしまうのです。つまり、本来は自分の体を守るためにあるはずの白血球が細菌に破壊されることで自分の肺組織を破壊してしまう。最近の研究では肺炎がひどくなる原因のうちのかなりの部分がこの自分で自分をぶっ壊すことが原因であることがわかってきています。

|