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蓮沼浩のコラム
「第244話 「血便 その8」」

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2011年9月8日

 子牛の偽膜性腸炎は本当に手ごわく小生は発生するといつも難儀していました。どうして子牛がこのような病気にかかってしまうのか?という疑問はたえず頭の中にありました。もちろん糞便からはコクシジウムが間違いなくとれます。牧場が汚染されているから消毒しましょうということも大切だと思いますが、偽膜性腸炎が発症して重症になる農場は子牛の栄養状態が悪いところに多い傾向がありました。母牛の飼養管理や子牛のスターターの使い方などをしっかりとすれば血便にはなっても偽膜性腸炎までにはなりにくいという感触をもっています。ところが数年前から「トルトラズリル」を主成分とするコクシジウムの薬が発売されました。今ではすっかりメジャーな薬ですが、結構すごいです。血便の予防で小生は使用するのですが小生が往診を回る農家さんから子牛の血便が激減しました。もう偽膜性腸炎はほとんど診療していません。予防的に使っていない農場でも治療の最初に飲ませることで血便の治りはかなりよく、偽膜性腸炎に移行することも小生の経験では非常に少ない感じです。あんなに悩んで苦しんで泣きそうになった偽膜性腸炎の治療から小生は開放されてうれしくてしょうがないのですが、農家さんは「そういえば最近でんどな〜」と妙にあっさり(笑)。色々な意見はあると思いますが、できれば予防プログラムに組み込みこんでもらいたいですね。

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