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2014年3月13日
牛さんの怪我に対する回復力はすさまじいものがあります。小生も今までに多くのひどい傷やらなんやらを治療してきましたが、本当にきれいに傷が回復していく姿を見ると、牛さんのすごさを感じます。そんな中、最近今までの獣医師人生で初めての外傷に遭遇しました。ホント、意外な症例だったのでうまく治るか心配でしたが、小生の治療のおかげではなく、牛さんの回復力のおかげで治りました。
ではどんな症例かといいますと、トラックから子牛を下す時に子牛がダイビングして顎から地面に着地。そして、下唇がべろりと一皮むけてしまうという状態でした。写真を見てもらえばわかりますが、なんだかリドリースコット監督のエイリアン状態です。巨匠H.R.ギーガーの描くエイリアンの口みたいです。牛さんの状況といい、事故のさみしさといい、まさにシュールリアリスム。何度考えてもH.R.ギーガーの世界。
とにかく子牛に鎮静をかけて患部を洗いまくります。そしていざ縫合をしようとすると・・・・とにかく縫い代がほとんどありません。針と糸を通すところがほとんどないのです。しかし、縫えるところを見つけてとにかく縫います。歯茎を貫通して糸をかけたり、何とか肉を寄せたりと非常に苦労して20針ほど縫いまして処置は終了。あとは術後管理として抗生剤の連日投与。2日の絶食とその後はミルクの給与。粗飼料や配合などの餌は1週間ストップとしました。さて、その結果・・・・。

パッと見た感じなんだかあまりよくわからないのですが・・・

中を開けると下唇が思いっきりズル剥けています。
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