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松本大策のコラム
分娩前後の飼養管理の問題 その2

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2014年3月3日

 先週は、分娩前後の低栄養が分娩後の卵の発育に悪い影響を与える、というお話をしました。今回は分娩前後の栄養管理による子宮の問題についてお話ししたいと思います。

 妊娠末期の子宮は、子牛がすっぽり入っているのですから、大型のボストンバッグくらいの大きさです。これが2週間もすると人間の指数本分くらいに縮んでしまうのです。牛さんの子宮は二股に分かれていて、その片方ずつを子宮角と呼びますが、初回発情の時は左右の子宮角とも僕の人差し指くらいの太さなおかつ良好な発情時の子宮は、直腸検査するとキュッと収縮してくれます。

 そのような子宮の状態を保つためには、まず分娩後にきちんと後産が出ること、子宮の中の汚れ(悪露)が2週間くらいできれいになることが必要です。さらに子宮の収縮のためには、子宮の壁(子宮平滑筋)がうまく働いてくれなければなりません。

 子宮の収縮には、オキシトシンというホルモンへの反応がよくないといけません。この反応は先週お話しした「良好な卵胞」から出るエストロジェンというホルモンで調整されるので、分娩前後の低栄養は、ここでも悪影響を及ぼします。
 ただ、子宮収縮にはホルモンだけではダメで、カルシウムの濃度が十分でなければならないのです。カルシウムは筋肉の収縮の調整にも大きな働きをするのですね。分娩前後は、母乳の生産などでカルシウムが不足しやすい時期でもあります。
 乳牛では昔から行われていますが、分娩前1ヶ月~2週間程度の時期にビタミンDを投与してカルシウムも補給してあげると、分娩前後のカルシウム不足の心配がなくなります。初回発情の子宮の状態がとても良くなるはずです(僕は注射でビタミンD剤を5mlとゼノビタンを5ml、それにビタミンEを10mlくらい打って、ドン八ヶ岳ADEを 50g×10日~20日間程度餌に混ぜてあげます)。
 最近は、和牛でも産前産後の起立不能が出ますから、こちらの予防にもなりますよ。

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