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池田哲平のコラム
牛の解剖126:雌性生殖器(9)

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2013年10月11日

 では次に、子宮の中で受精卵が実際にどのようにして成長していくのかを見てみましょう。

 卵管から子宮角に降りてきた受精卵はしばらくの間、子宮の中をふわふわと浮遊しています。と言っても、ウシの場合、反対側の子宮角まで移動することはほとんどなく(1%以下)、卵管から下降してきた方の子宮角に留まります(ちなみに、ウマでは50%ほどの受精卵が反対側の子宮角にまで移動します)。授精(交配)後15日ほどすると、胚へと成長した受精卵は動かなくなり、授精後17日前後から子宮とくっつき始めます。この「胚と子宮がくっつく」ことを“着床”と呼びます。メス牛にしっかり発情が来て、タイミング良く授精できて受精卵ができても、この着床が上手くいかなければ妊娠は成立しません。子宮内に汚染や損傷があれば受精卵は着床できないので、子宮内の環境は胚(将来の赤ちゃん)にとって非常に大切なのです。

 ここで、ウシさんを始めとした反芻動物ではこの着床が起こるところが決まっていて、子宮の表面に存在する“子宮小丘(しきゅうしょうきゅう)”と言う場所に限定しています。人も含めた他の哺乳動物では決まった場所はなく、胚(赤ちゃん)は子宮内のどこでも着床できますが、ウシさんではそうはいかないのです。

 着床したところはそのまま胎盤となり、母体から胎子への栄養供給路になりますが、着床部位が限定されているウシさんは、妊娠やその後の妊娠の維持が他の哺乳動物に比べて不利なんじゃないか?と思われる方もいるかもしれませんが、実はメリットもあるのです。

 続きはまた次回!!(ちょっとムズカシイ話になるかもしれません・・・・・・)

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