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伏見康生のコラム
NO.250:牛の病気―頭部―(11)

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2013年9月18日

11、鼻鏡の白斑

原因と病態
国内で見られる黒毛和種牛の鼻鏡の白斑には、沖縄糸状虫(Stephanofilaria okinawaensis)の寄生による「鼻鏡白斑症」と、遺伝性・自己免疫性の疾患とされている「尋常性白斑症」の両者が混在している可能性があると思われる。
沖縄糸状虫は奄美大島や沖縄等の南西諸島において確認される寄生虫であり、かつては素牛の市場価値を下げる経済的損失の大きい疾病であったが、駆虫薬が広く普及した現在においては不顕性化しているものと思われる。

症状
本来黒色である鼻鏡に色素脱が起こり不整形地図状の白斑が形成される。
(鼻鏡に症状が現れることが多いが、乳頭などにも病変が確認されることがある。)
鼻鏡白斑症では強い掻痒感を伴い出血し痂皮を形成するとされるが、筆者はこれまで鼻鏡の白斑はあってもそのような炎症症状を伴う症例との遭遇は無い。これには沖縄糸状虫感染後に駆虫剤が投与され色素脱症状のみが残存しているためと考えられる。

農家さんができる処置
鼻鏡白斑症の発生地域である奄美大島や沖縄等の南西諸島に於いては、予防的にイベルメクチンによる定期的な駆虫(特に放牧牛)、沖縄糸状虫を媒介するウスイロイエバエの駆除、白斑のある牛の駆虫を行う。
尋常性白斑症への処置は特になし。

獣医師による治療
特になし

予後
以後の飼養に問題はない。

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