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舞子ぷらずま☆—今牛舎で読みたい本10選—第6回 |
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2013年8月6日
第6選:「みをつくし料理帖」シリーズ
――我が道と決めたからには、さらに身を尽くして精進しよう

畜産関係の方は、実際ご自身でされるかどうかは別としても「料理」に近い場所にいるもの。料理がおいしそうな小説は池波正太郎作品をはじめ、あまたありますが、今回は近年人気の「みをつくし料理帖」シリーズのご紹介です。(テレビショッピングみたいな導入ですみません)
時は江戸時代。神田の料理店「つる屋」の調理場で腕をふるう少女・澪が主人公です。女性の料理人が珍しいこの時代に、天性の味覚を見込まれ調理場を任される澪。天涯孤独の身である彼女は、自分の幸せはここにしかないと料理人として血のにじむような努力を重ね、数々の試練に向き合っていきます。その物語とともに綴られる、季節の旬を繊細にもちいた上方料理の、どれも美味しそうなこと! 「とろとろ茶碗蒸し」「菜の花づくし」「牡蠣の宝船」など、難しい蘊蓄などなしにひたすら美味を追求する一皿は、料理・グルメ好きでなくてもたまらない魅力。手を尽くしながらも素材を大切にする澪の料理には、包丁を握る人の心得を教えられるようです。謎の浪人との淡い恋の行方、吉原にいる幼馴染、料理人としての孤独で険しい道――、故郷の大坂を離れた江戸での生活は困難を極めますが、周囲の魅力的な人びとと手を取り助け合って精一杯生きていく様に、素直に心を動かされ、暖かい涙があふれる人情もの。ちょっと疲れたとき、自分だけが損をしているような気分になったときに読むと、澪のまっすぐな心に励まされてまた頑張れる、そんなシリーズです。
「あれこれと考え出せば、道は枝分かれする一方だ。良いか、道はひとつきり。それを忘れるな」(八朔の雪)
「身を尽くす。そのひたむきな生き方が、ひとの心を捉えるのだ」(花散らしの雨)
「楽しい恋は女をうつけ者にし、重い恋は女に辛抱を教える。淡い恋は感性を育て、拙い恋は自分も周囲も傷つける。恋ほど厄介なものはありゃしませんよ」 (花散らしの雨)
「誰しも婚礼の席では、どうか末永く幸せに、と祈る。けれど人生はそう容易(たやす)うはない。良いことと同じくらい辛いこと、悲しいことが待ちうけてるんや。苦しい時に思い出してもらえるような、そんなお膳を作りなはれ」(小夜しぐれ)
(つづく)
黒沢牧場 上芝舞子
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