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伏見康生のコラム
NO.223:牛の病気―頭部―(6)

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2013年2月27日

6、秋季結膜炎

原因
指状糸状虫(Setaria digitata)の子虫が結膜下へ侵入することで発症することが確認されている。

症状
秋季から冬季にかけ発生し、結膜の異常突出が見られる。
多くの場合片側性である。
初期には突出した結膜表面は滑らかであり、眼球自体に病変はほとんど見られない。類症鑑別として外傷性角結膜炎、感染性角結膜炎等があるが、本病は両疾病と比較して発赤は弱く、流涙、眼脂が少ない。
これには本疾病の外観上のインパクトが大きく、多くの症例が発症初期に発見されることも大きく関わっているものと思われる。
発見が遅れ、細菌の二次感染を受けた場合には他の結膜炎と同様に、角膜症状を呈するものと思われる。
仔牛及び繁殖母牛、育成牛は駆虫を行うことが習慣化されている場合が多いため、経験上ではステージの進んだ肥育牛での発症が多く見られる印象がある。

農家さんができる処置
早期発見と獣医師への診療依頼を行う。
予防的に定期的な駆虫を行うことが望ましく、行なっている場合には発症はほとんど見られない。
発症牛へイベルメクチン製剤(アイボメック等)による駆虫をすべきであるが、肥育牛の場合には出荷規制を考慮し慎重な投与を心がける。また、同製剤は過量投与により脳神経障害を引き起こすことがあるので適切な使用量を守る。

獣医師の治療
発症牛の背景(飼養目的、出荷時期、健康状態等)を考慮してイベルメクチン製剤による駆虫を行う。
数診のステロイド注射で軽快する。免疫抑制、二次感染予防を考慮し抗生物質の同時投与が望ましい。
すでに二次感染を受けている場合には「感染性結膜炎」の項に準じた処置を施す。

予後
適切な処置の元では予後に影響はない。

NO.223:牛の病気―頭部―(6)01
写真1
秋季結膜炎で結膜の異常突出を認める肥育牛

NO.223:牛の病気―頭部―(6)02
写真2
写真1の牛に、イベルメクチン製剤、ステロイドによる治療を行い二日後の写真。
若干の結膜腫脹が残るが大きく症状が改善し、以後の再発はなかった。

NO.223:牛の病気―頭部―(6)03
写真3
秋季結膜炎で結膜の異常突出を認める肥育後期の牛

NO.223:牛の病気―頭部―(6)04
写真4
写真3の牛のおよそ2週間後の写真。
治療により結膜は一度退縮したが、再度腫脹してきた例。

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