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松本大策のコラム
イナワラについて思っていること

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2012年12月10日

 中国の大連で、豚の口蹄疫が発生したことから、中国産イナワラの輸入が止まってしまいました。大きな農場など、中国産イナワラに頼っていたところでは対処に追われています。

 今から言っても遅いのですが、これからでも中国以外にイナワラの入手経路を確保しておく必要があると思います。このように、万が一の場合に備えることをフェイルセーフと呼びます。

 まず、イナワラを輸入するには、植物検疫と動物検疫の両方をクリアしなければなりません。アメリカでもカリフォルニアなどでは稲作が盛んですし、粗飼料は大量に輸入されているのに、どうしてアメリカ産のイナワラが輸入できないのかというと、稲に日本にはない植物の病気があるため、植物検疫の面から輸入できないそうです。

 中国の場合は、植物検疫の問題はないのですが、皆さんご存じのように口蹄疫が散発していますから、燻蒸消毒しなければ輸入できないわけです。しかし、今回のように「燻蒸消毒基地」のある大連で口蹄疫が発生した場合、イナワラだけでなく輸送船やコンテナなどからの感染も否定できないため輸入停止になったのです。
 僕は、将来的にこのような事態に備えるために、輸出国を拡大することと、国産イナワラを有効活用することの両面から考えておくべきだと思っています。

 まず、国内の稲作農家さんは、「米粒」からの収入しか得ていませんが(イナワラからの収入はわずかです)、実際は治山治水事業の肩代わりをしていたり、二酸化炭素の吸収や酸素の製造、下流域の漁場整備などのお仕事もして下さっています。
 このような農家さんへの「当たり前の」対価として国土交通省とかの予算を振り向けられないものか、同時にイナワラの焼却など(違法ですが)を防ぐための予算などを、イナワラの流通に向けられないものか、と思います。

つづく

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