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百万石物語(第6回)

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2012年11月27日

<運命の瞬間>

百万石物語(第6回)

「わあー、出た出た。」野菜の種をお腹に巻きつけ、体温で芽が出るのを待つ。
「わあー、出た出た。」数日後、種の殻を被って頭をのぞかせる。
また、「わあー、出た出た。」…中略
(農業共済新聞、H4.5.27 おれたちが担う、明日の農業 投稿特集から)

この記事を読んで、「今どき、腹で芽を出す?」と思いつつ、会わないといけないと思った。いったいどんな人なんだろう。モウちゃん・じいさん・ばあさん・こどもには人気があったが、どうも…。一カ月半躊躇した。
そして、種付けに行った農家さんに理由を話し、奥さんが育てた真っ赤な「ケイトウ」を送った。「会いに行きますよ。」と一言添えて。

送った数日後、留守電にメッセージが入っていた。「大分の山下です。また、電話します。」と。
しかし、期待を膨らますも、その後電話はこなかった。

7月30・31日、嫌がる友人に臨月の牛を無理やり押し付け、大分へ。
海が見える彼女の畑で一時間半。「もんぺ」姿でまくわうりを探す後ろ姿に魅かれた。
一週間後、突然の留守電。「大分の山下です。今から行きます。」と。父の七回忌の法要中だった。空港へ行くもいない。連絡がないので非常に心配した。夜10時を過ぎ、やっと捕まった。彼女は石巻に行っていたそうだ。

そしてその夜、二人は夢を語り合い、結婚の約束をした。実に会って、四時間半の出来事。

後日私は、恐る恐る聞いてみた。「私のどこが良かったのですか?」と。
すると彼女は、「会った瞬間、魂が震えた。」と言い、「今でも微熱が続いている。」
エヘッ。

(つづく)

株式会社百万石牧場
代表取締役 千葉 正彦
http://www.hyakumangoku.vtown.jp/

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