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松本大策のコラム
血液検査のお話し

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2012年11月26日

 牛さんの医療にも血液検査が用いられるようになって久しいのですが検査結果が何を表しているのか、どのようなことを読み取っていくのか、など判断は結構難しいものなのです。

 代謝プロファイルテストという言葉を耳にしたことや実際にやってもらったことのある方も多いと思いますが、これは血液検査や血清生化学検査の結果から、農場の管理が適切であるかどうかの判断をし、適切でない部分を発見したら、そこを修正しようという大変科学的な試みです。
 しかしながら、ケースによってはせっかく高いコストをかけて実施した代謝プロファイルテストが、有効に利用されているとはいえない状況も耳にします。

 一例を挙げると、「1番と5番の牛は、GOTが高いので肝機能が悪いと思います」などの報告書を見かけますが、このような異常個体の発見は「健康診断」といって、本来全頭やらなければ意味がないものです。職場や地域の健康診断のとき、何人か選んで検査する、なんてことはないでしょう?
 代謝プロファイルテストの対象は、あくまで「健康牛」で、それらの群がどのような消化や身体を動かす仕組みの傾向にあるか?を調べて、農場の管理の不適切な部分を洗い出すものなのです。ですから、本来「肝臓が悪い」などの異常牛は省いて検討します。もちろん、選び出した検査対象群に「肝臓の悪い牛」がたくさん出るときは、別途「肝臓を傷害するような飼養管理失宜」がないかの検討をします。

 皆さんが時折目にするGOTとかGGTとかいう項目は、それぞれ肝臓とか胆管とかの「ある臓器」の細胞だけに含まれていて、その細胞が壊れると血液中に現れてくる「逸脱酵素」と呼ばれるものです。GOTは肝細胞や赤血球、筋肉に、GGTは胆管に、ACPは前立腺に、という具合に、それぞれの臓器で含まれている酵素が異なるので、それぞれの酵素を測定することで、どこの臓器の細胞が壊れているか、を知ることができるわけです。
 ここで一つ注意しなければならないのは、GOTやGGTなどの肝臓に関係する酵素が血液中にたくさん出ている=肝機能低下ではないということです。これは、あくまでそれらの臓器の細胞が壊れたよ、ということであって、たとえば肝臓などは、1/4も健康な部位が残っていれば機能は変わらない、などとよく言われるように、細胞が壊れていても「肝機能」は低下していないケースもありますし、肝臓の細胞は壊れていなくても、肝臓の血流低下などで「肝機能低下」が見られる場合もあります。
 肝機能を調べるには、肝臓で合成されるアルブミンやコレステロールを測定するのが一般的です。

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