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被災地を旅して 〜TALKへ行きたい!⑦〜

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2012年10月9日

今年8月、東北の養豚家をめぐりました。

震災直後の大混乱やエサ不足から脱して、農場は落ち着きを取り戻していましたが、地震が母豚たちに与えたストレスは、予想以上で「タネが付かない」「産まれる子豚の数が少ない」「産まれても、育たない子がいる」。そんな状態が、いまだに続いています。そこへ「東北産」というだけで風評被害。しかもブランド豚ほど影響が大きいと感じました。

福島県中通り、南部の泉崎村に「㈲中野目畜産」という農場があります。社長の中野目正治さんは、福島県養豚協会の会長も務められています。豚舎には母豚、子豚、肥育豚、そして雄豚の姿も。LWDの三元豚が主力で、一部バークシャーも。合わせて常時3000頭を飼育。「夢味ポーク」と名付けたブランド豚としても知られていました。

震災当日、農場は大きく揺れて、養豚場は大きく倒壊。津波は来なくても被害は大きく、豚の足元に敷いていた「簀の子」が落ちて、一緒に80㎝も落下した豚もいました。「身動きできなくって、助け出すのが大変」だったそうです。

中野目さんは、大事に育ててきた250頭の母豚のうち、150頭をやむなく手放し、残った豚を仮設の豚舎に移して豚舎を再建。新しい4つの豚舎が今年7月に完成したばかりです。

再建のために1億8千万の融資を受けました。長男の貴洋さんが店長を務める「ノーベル」という精肉、ハム、ソーセージの直営店も再開しましたが、お中元、お歳暮などのギフトの売れ行きがふるいません。それでも中野目さんは「東電に賠償請求しない。自力で再建する」と決意します。

「正直、これからどうなっていくんだ? という時期もありました。東電に請求はしていません。それをやってしまうと、スタッフの志気が落ちて、回復のスピードも遅くなってしまう。別の戦略を立てよう!」

新しい豚舎では、子豚たちが無心に母豚の乳首に食らいついていました。「夢味ポーク」は、しゃぶしゃぶにしても、アクが出ないのが自慢。良質な肉とその加工品を販売して、お客様に評価していただくことで、再建したい————風評に負けないように、中野目さんも、スタッフも、そして豚さんたちも、自力再生を目指して頑張っています!

● 「夢味ポークのノーベル」 http://www.yumeaji.com

新しい豚舎で生まれた子豚たち。
母豚たちも、出産に向けスタンバイ。
震災で大きなダメージを受け、自力再生を目指す中野目社長。

(つづく)

三好かやの
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