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松本大策のコラム
「割り込みコラム 〜 台風にまつわる注意 〜」

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2009年8月17日


 今年も台風の時期になりました。先日も兵庫県で大きな被害が出たばかりです。台風の前後には、牛さんの体内でも、牛さんを取り巻く環境でも大きな変化が起こり、その影響で2次的に牛さんに、思いもよらぬ被害が出ることもあります。今回は、ビタミンAのお話しをお休みして、「台風の2次被害を防ぐ」をテーマに一緒に考えてみたいと思います。

 台風では、強い風と雨の影響で屋根が飛んだり、牛舎が倒壊したりする場合もあります。ここまで来るとさすがに開き直ってしまうでしょうが、そこまでの被害がなくても停電、断水、牛舎内への浸水だけは事前に想定しておかなければならないと思います。
 停電と断水で喉が渇いた牛さんは、牛床のウンコや敷き料、泥などが混じった汚水を飲みます。浸水でお腹が冷える事も手伝って消化器系の病気を起こす牛さんが多いのです。こういう被害を防ぐためには、台風が去った後に、速やかに敷き料の交換が出来るように、台風が来る前には可能な限り堆肥舎を空けておくこと、ノコクズがぬれないようにしておくこと、などの用意をしておくと牛舎内に浸水があっても対応できます。また、停電に備えて発電機(4〜5万円で買えます)も用意しておくと、ワラ切りやポンプも使えますし、台風一過の晴天で起こりやすい「熱射病」の時に据え置き型の扇風機を作動させることも出来ます。
 台風前後には気圧の急激な変化が起こるため、第一胃内細菌叢の変化やストレスがかかり、第一胃内で発生するエンドトキシンの影響なども相まってズルなどの病気も増加します。また、汚水を飲んだりお腹を冷やしたりで起こる下痢やガスも起こりやすくなります。これらの第一胃発酵異常に対応するために、ソフトシリカやゼオライトなどの吸着剤やアースジェネターなどの生菌剤は余分に用意しておきましょう。台風後に足が腫れたり、指間が赤くなったりする場合は要注意です。こういう牛さんには、ビタミン剤なども投与してあげましょう。もしもズルが出たり、急死してしまうようなことがあれば、肉質どころの話ではありません。うちでは、ビタミンA剤を150万単位程度とビタミンE注10ml、パンカル注10mlを注射するか、ビタラップ63 20ml1回飼料添加し、ドン八ヶ岳50g/頭×3〜7日、メイロング20g+パンカルG散100g/頭×3日間を飼料添加してもらうことが多いです。このあたりは最寄りの獣医さんに相談してください。

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