(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第570話「メタンができてしまう」

コラム一覧に戻る

2026年11月5日

***********************************************************
シェパードイチオシ情報
■ 尿でわかる!マイコトキシン検査はじめました
尿中カビ毒検査とは(チラシ) / ご依頼の手順など
***********************************************************

ルーメンに生息する微生物の発酵分解によって、通常はエネルギーなど直接得られるはずがないセルロースなどの繊維質から牛は大量のエネルギー(脂肪酸)を生み出すことができます。それ自体はすばらしいのですが、その反応過程ではどうしても利用できないものも発生してしまいます。

たとえば、酢酸が生まれる過程を見てみましょう。糖(C₆H₁₂O₆)の分解によって酢酸(CH₃COOH)が作られるとき、同時に二酸化炭素と水素が発生します。
反応式で見てみるとこんな感じです。
C₆H₁₂O₆⇒2CH₃COOH+2CO₂+4H

ただ、これらはメタン生成菌によって利用され、
CO₂+6H⇒CH₄+2H₂O

という反応によってメタン(CH₄)と水(H₂O)に変化していきます。水はもちろん生命活動に利用されますが、メタンガスはどうしても利用できないので、曖気(げっぷ)によって体外へ排出されます。もちろん、二酸化炭素の一部も同様です。

栄養源となる脂肪酸以外の物質を利用できる菌が生息しているという点で、ルーメン内の発酵も仕事の世界と同じように分業化が進んでいるとは驚きです。ただ、メタンガスというのは温室効果ガスともいわれ、現時点では「大気中にたくさんあってもOK」というわけにはいかないガスでもあります。このメタンガス産生菌をいかに減らすことができるか、という観点も大切なのですが、それと同時に、「プロピオン酸の産生菌を増やす」という考え方も非常に重要です。

それはプロピオン酸の生産過程を見ると納得です。

C₆H₁₂O₆+2H₂⇒2C₃H₆O₂+2H₂O

プロピオン酸を作るには水素を消費せざるを得ないのです。つまり、「プロピオン酸がどんどんできる=水素がどんどん使われる=メタンの材料がどんどん減る=メタンガスできない」という結果につながるのです。プロピオン酸は糖の生産反応にも関係しているので、できるだけ産生量を増やしたい脂肪酸です。つまり、プロピオン酸産生菌を増やすことができれば、メタンガスの発生量は自然と減ることが期待できます。

***********************************************************
今週の動画
耳の毛刈りは大切なのです

|