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蓮沼浩のコラム
第888話:もしかしたら牛肉不足の入口に立っているのかもしれない?(その1)

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2026年8月18日

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令和8年7月29日、農畜産業振興機構さまから「牛肉の需給予測について」という資料が公表されました。

牛肉の需給予測・・・

生産現場にとっても非常に重要なポイントなので、今回から何回かに分けて、この資料から日本の牛肉需給が今どのような状態にあるのかを考えてみたいと思います。

第1回は、国内の出荷頭数と牛肉生産量についてです。

今回の出荷予測は、単に過去の実績を延長して算出したものではありません。牛個体識別情報に登録された出生頭数を、品種ごとの平均的な出荷月齢まで遡って計算しています。
つまり、数年前に生まれた子牛が現在どれくらい肥育牛として出荷されるのかを予測しているのです。肉用牛の場合、「出生」と「牛肉生産」の間には数年の時間差があります。そのため、出生頭数の変化を見ることは、数年後の牛肉生産を考えるうえで非常に重要です。
まず、牛肉生産量を見てみましょう。

令和8年7月は2万9,800トンで前年同月比92.9%、8月は2万4,300トンで97.6%と予測されています。6~8月の3カ月平均でも前年同期比96.7%です。全体では3.3%の減少でした。

品種別に見ると状況がさらによく分かるのでちょっと表にしてみました。

6~8月平均の出荷頭数は、
和牛  4万1,900頭 前年同期比93.1%
交雑種 1万9,400頭 前年同期比93.2%
乳用種 2万2,800頭 前年同期比104.3%
と予測されています。乳用種の出荷頭数は増加しますが、和牛と交雑種はいずれも前年より約7%減少します。特に7月の和牛出荷頭数は4万7,300頭で、前年同月比89.2%。前年より約11%も少なくなる予測です。乳用種が増えることで牛肉全体の減少幅はある程度抑えられていますが、乳用種、交雑種、和牛では流通する市場や用途が異なります。乳用種が増えたからといって、和牛の供給減少をそのまま補えるわけではありません。では、この和牛の減少は一時的なものなのでしょうか。ここで少し時間軸を長くして、黒毛和種のと畜頭数を見てみましょう。黒毛和種のと畜頭数は2019年度の約45.9万頭から増加傾向をたどり、2023年度には約51.3万頭、2024年度には約54.8万頭規模まで増加してきました。

つまり、これまでの日本は「和牛がどんどん減っていた」わけではありません。むしろ、過去に増加した出生頭数が数年遅れて肥育牛として出荷され、近年までと畜頭数を押し上げてきたのです。

ところが、その上流で変化が起きています。黒毛和種の出生頭数は、2015年度の約49万頭から増加を続け、2022~2023年度には約57~58万頭まで増加しました。しかし、2024年度は約54万頭まで減少しています。およそ1年間で3万頭以上、率にして約6%の減少です。
ここが非常に重要です。出生した黒毛和種が肥育され、と畜されるまでには、おおむね2年半程度かかります。そこで出生頭数の推移を約30カ月後にずらして、と畜頭数の推移と重ねてみると、これまでの「出生頭数増加 → 数年後のと畜頭数増加」という関係がよく見えてきます。逆に考えれば、「出生頭数減少 → 数年後のと畜頭数減少」も避けにくいということです。令和6年度に確認された出生頭数減少の影響は、令和8年後半から令和9年頃にかけて、本格的に出荷側へ現れてくる可能性があります。そして、その前段階とも考えられる数字が、今回の需給予測にすでに出ています。6~8月平均の和牛出荷頭数は前年同期比93.1%。
特に7月は89.2%。「将来、和牛が減るかもしれない」という話ではなく、実際の出荷頭数に減少が現れ始めているのです。

試しに、過去の出生頭数とと畜頭数の関係から、出生からと畜までを約30カ月として単純に計算してみました。
これは農林水産省や農畜産業振興機構さまの公式予測ではなく、あくまで出生頭数から将来の方向性を見るための参考試算ですが、黒毛和種のと畜頭数2025年度頃を高水準として、その後減少方向へ向かう可能性が示されます。

2026年度 約52万頭
2027年度 約50万頭
程度まで減少しても不思議ではありません。

さらに繁殖雌牛と出生頭数の減少が続けば、その先には50万頭を下回る世界も考えておく必要があります。もちろん、将来の出荷頭数は肥育期間、事故率、雌雄構成、経営環境などによって変化しますので、この数字そのものを予言することはできません。しかし、「増加してきた和牛供給が転換点を迎えつつある」という方向性については、注意して見ておく必要があると思います。これまでコラムで何度か、繁殖農家さんの減少、母牛頭数の減少、子牛出生頭数の減少についてお話ししてきました。しかし、それはどこか、「将来、牛が足りなくなるかもしれない」という話として受け止められていたように思います。今回の数字を見ると、その「将来」がいよいよ現実になり始めているのかもしれません。

嗚呼、ついにここまで来たか~~~という感じです。

これまで増加してきた黒毛和種のと畜頭数。その上流にある出生頭数はすでに減少へ転じ、そして今回、足元の和牛出荷頭数にも前年割れという数字が現れ始めました。静かに縮小している・・・いや、静かではないですね。音を立てて縮小し始めているのかもしれません。

令和8年夏のこの数字を数年後に振り返ったとき、「あの頃が、日本の牛肉供給が本格的に減少し始めた転換点だった」と言われることになるのでしょうか?まだ断定することはできません。しかし少なくとも、「牛肉不足の入口に立っているのではないか?」と考えておくべき数字が出始めていると私は思います。次回からは、国内生産が減少したときにその不足を補うはずの「輸入牛肉」と、急速に減少している「牛肉在庫」について考えてみたいと思います。

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