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蓮沼浩のコラム
第887話:一応、受精卵和牛子牛の出生頭数を調べてみた。

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2026年8月4日

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前回のコラムでは、市場に上場される和牛子牛の頭数について分析してみました。そこで今回は、一般社団法人Jミルクさまが公表している月別出生頭数のデータを使わせていただき、受精卵移植によって生まれた和牛子牛の出生頭数がどのように変化しているのか、あらためて調べてみました。データを見てみると、ある程度予想はしていましたが、牛全体の出生頭数が減り続けるなか、和牛ET産子の出生頭数は増加していました。ちなみに、今回お話する内容はすべて乳用種が生んだ子牛のデータになりますので、この点はご注意ください。

2025年6月から2026年5月までの全国の「和牛(受精卵移植)等」の出生頭数は73,151頭でした。前年度の69,337頭から3,814頭増加し、増加率は5.5%となっています。月平均では6,096頭となり、初めて6,000頭を超えました。一方、同じ期間の乳用種が生んだ全体の出生頭数は、692,346頭から670,877頭へと約2万1,500頭、率にして3.1%減少しています。

このことからわかるように、出生頭数が全体として増えた結果、和牛ET産子も増えたというわけではなく、限られた乳牛や受卵牛(レシピエント)という資源を、乳用種や交雑種の生産ではなく、和牛ET産子の生産へ振り向ける動きが強まっていると考えられます。
このことから、和牛ET等の構成比は10.0%から10.9%へ上昇しました。感覚的に言えば、牛の出生約10頭に1頭だったものが、約9頭に1頭へ近づいたことになります。

和牛ET等出生頭数を月別にみると、2025年6~8月は前年割れでした。しかし9月以降は2026年5月まで9か月連続で前年を上回っています。特に2月は+14.0%、5月は+13.8%でした。単月の偶然というより、増加基調へ移った可能性が高いと判断できます。

ただし、この成長は全国一様ではありません。全国の増加3,814頭のうち3,204頭、約84%を北海道が占めます。北海道の全国シェアも40.5%から42.7%へ上昇しました。乳用牛と受卵牛候補が多い地域で、乳価、乳用後継牛需要、交雑種価格、和牛子牛価格を比較しながら、和牛ETへの転換が進んだ可能性があります。2026年5月は全国で+13.8%でした。実数の増加は北海道+212頭、東北+185頭、九州+184頭、関東+141頭が中心です。一方、北陸は▲36頭、中国は▲53頭でした。全国市場が伸びていても、地域や事業者によって体感が大きく異なる理由がここにあります。


 
 

この24か月の数字を見る限り、和牛ETは縮小産業ではありません。むしろ、牛全体の出生頭数が減少するなかで、着実にシェアを拡大している成長分野だといえます。ただし、その伸びは北海道をはじめとする一部地域や、大規模事業者に集中している可能性があります。牛の総数が減少する時代だからこそ、限られた受卵牛から「何を生産するのか」という選択は、以前にも増して重要になります。和牛ETの増加は、単なる出生頭数の変化ではありません。日本の子牛生産構造が、静かに、しかし確実に組み替わりつつあることを示す数字なのだと小生は考えています。

一方、今年6月から9月にかけて、乳牛および交雑種の受精卵移植を対象とした補助事業が実施されています。今回、和牛受精卵は補助の対象となっていません。この政策誘導によって受精卵移植の選択がどのように変わり、来年の乳牛、交雑種、和牛ETの出生構成にどのような影響が表れるのか、非常に興味深いところです。もちろん、和牛ET子牛の出生頭数は、子牛価格や枝肉相場、飼料費、受胎率、受卵牛の確保、移植技術者の体制など、さまざまな要因に左右されます。しかし、そのなかでも国が「どの受精卵移植に、いつ、いくら補助するのか」は、生産現場の選択を大きく動かす重要な政策手段です。

換言すれば、補助対象となる品種、補助単価、実施期間、そして事業予算の規模を見れば、国が将来の乳牛、交雑種、和牛の頭数をどのようなバランスに誘導しようとしているのか、その意図の一端を読み取ることができます。今後、もし和牛受精卵移植に対する補助が再び導入、あるいは拡充されるとすれば、その時期と金額は、国が日本の和牛生産基盤をどの水準で維持しようとしているのかを示す重要な政策シグナルになるでしょう。

来年の出生頭数は、単なる結果ではありません。今年、国と生産現場が何を選択したのかを映し出す数字でもあります。今後の補助政策と出生頭数の変化を重ね合わせながら、日本の子牛生産構造がどこへ向かおうとしているのか。とっても興味深いですね。引き続き注目していきたいと思います。

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