(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第861話:見えるか、見えないか

コラム一覧に戻る

2026年1月27日

***********************************************************

尿でわかる!マイコトキシン検査はじめました
尿中カビ毒検査とは(チラシ) / ご依頼の手順など

***********************************************************
 
先日、肥育農家さんで診療をしていると、Aさんがニコニコしながら枝肉成績を見せてくださいました。

Aさん「蓮沼先生~~~、凄く枝肉成績がよかった~~~!」
ハス「それは良かったですね!!どんな感じだったのですか!」
そう言いながら、小生は出荷成績が印刷された紙を見せていただきました。
7頭出荷して、6頭がA5の12番、1頭がA5の11番。さらに1トン越えが3頭。平均枝肉重量は649.3kg。
ハス「ひょえ~~~~!すさまじい結果ですね!!さすがAさんです。素晴らしい!!」
Aさんはニッコニコ。小生、農家さんが喜んでいる姿を見るのが大好きです。よかった、よかったと思いながら、ふと素牛データ(血統、産地、繁殖農家、導入体重など)に目をやりました。

すると・・・

全頭、血統も産地も繁殖農家さんも導入体重もバラバラ。あまり聞き馴染みのない血統の牛も混じっています。
ハス「Aさんは血統とか見て素牛を買わないのですか?」
Aさん「先生、自分は市場の名簿は全く見ないですよ」

そうなんです。Aさんはとにかく市場に足を運び、一頭一頭を見て、その“見た感じ”だけで素牛の能力を見極めていらっしゃいます。データは見ない。先入観を入れない。これは本当に、さすがとしか言いようがありません。Aさん曰く、「とにかく牛の見た目と雰囲気が一番大事」とのこと。ここが勝負です。当然、良い牛にはライバルも集まり価格は上がります。それでも自分が見極めた素牛を仕入れ、理想の枝肉に仕上げていく。目利きと仕上げの両方が揃って初めて成立する、まさに職人芸です。本当に凄い。

実は、これは農家さんだけの話ではありません。獣医さんも「見る」という能力が極めて重要です。牛さんを見た瞬間に、どこまで状況を読み取れるか。呼吸、立ち方、視線、被毛のツヤや汚れ、腹の張り、糞の状態、皮膚の乾きなどなど。数値に出る前の“違和感”を拾えるかどうかで、初動が変わります。そして初動が変わると、結果が変わります。

さらに、見て感じるべき対象は牛さんだけではありません。
牧場の空気感、牛舎の匂い、湿度、音。
餌の状態、飼槽の汚れ方、採食のムラ。
敷料の乾き、粉塵、通路の状態、扇風機の風量などなど。
「牛が悪い」の前に、「環境が牛をそうしていないか」を見る。
この視点が持てるかどうかで、対応はまるで違ってきます。

もちろん、データは大切です。血液検査、増体、飼料設計、枝肉成績、あらゆる数字は武器になります。ただ、現場で強い人ほど「数字に頼る前に、違和感を見つける」力を持っているようにも思います。

つまり・・・

見える人は、数字が出る前に気づく。見えない人は、数字が出ても気づけない。というか、あっても何も見えないので、そこにあるものがおかしいということに全く気が付くことができない。そんなことが、現場では普通に起きます。

だからこそ、日々の仕事で最重要なのは、ここだと思っています。
「見る」を意識する。
見えるものを増やす。
見えないものを、見えるようにする。
派手さはありませんが、粛々とこのように意識して物事に取り組んでいく。
小生もまだまだ修行の身。これからも精進したいと思います。
 
***********************************************************
今週の動画
牛の胎盤ってどんな感触?

|