(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第845話:粗飼料が一番怪しい・・・

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2025年9月30日

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やっと日中涼しくなってきました。本当に今年も暑さが半端なかったですね。来年はどうなっているのだろう・・・

カビ毒の汚染に関して色々現場をみてきました。ここで今までの知見から小生が思う事を一言。

カビ毒汚染は粗飼料が一番怪しい・・・。

もちろん小生の限られた例数なので何とも言えませんが、今までの事例ではほとんどが粗飼料が原因となっていました。乳牛の世界ではとくにデントコーンなど要注意ですね。バリバリ汚染されていることが多々あります。

では、肥育で使われている「わら」はどうなのだろうか?
「わら」は本当に安全か?

肥育牛にとって最も身近で、最も当たり前の飼料といえば「わら」です。見た目は乾いていて、匂いも悪くない。長年の経験から「わらなら安心」と思われがちです。しかし実際に研究を進めてみると、その「見た目の安全」は必ずしも牛の健康を守っているわけではないことがわかりました。

問題となったのは、「わら」に含まれていたカビ毒の一種「ゼアラレノン(ZEN)」です。見た目にカビが生えているわけでもなく、色や匂いに異常もない。しかし尿検査で調べると、牛は明らかに多量のゼアラレノンを取り込んでいました。つまり、外見からは全くわからないまま、牛群はカビ毒にさらされていたのです。

この結果をみて正直びっくり仰天いたしました。うそやろ!!!

牛の状態を確認すると、確かに変化が認められました。

わらの採食量が目に見えて減った。
軟便が多発し、管理作業も増加した。

「ちょっと調子が悪いだけ」と見過ごしてしまえば、それはカビ毒の影響とは気づけません。しかしデータで確認すると、やはりZEN汚染が背景に存在していたのです。

カビ毒吸着剤を給与することで、尿中のZEN濃度は有意に低下しました。けれども完全に下がりきることはなく、依然として高い数値を示しました。つまり、見た目がきれいなわらでも、汚染がある限りは牛に影響を及ぼすという厳しい現実です。吸着剤はあくまで「応急処置」であり、根本的には飼料そのものの安全確保が求められます。

汚染されていない「わら」を給与したら、それはそれ、よく食べました。

この研究から得られた最大の教訓は、「カビ毒は目に見えない」という事実です。「わら」は牛にとって欠かせない飼料ですが、その安全性を確保するには、検査とモニタリングを欠かしてはならないのです。尿検査のような方法で汚染を“見える化”することこそが、牛群の健康と経営を守る第一歩となります。

参考までにその時の論文をのせておきますね~
https://academic.oup.com/jas/article-abstract/90/5/1610/4764636?login=false
 
 
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今週の動画
牛の目をチェック!【脱水?】

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