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第500話「僕らはどうして直検をするのだろう⑦」 |
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2025年8月14日
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オスであろうとメスであろうと、「あるものが大きくなっていないか」を確認するために直腸検査を行うことがあります。
そのあるものとは・・・
ずばり、リンパ節です!
牛の場合、リンパ節が異常に大きくなる病気といえば「牛伝染性リンパ腫」が真っ先に頭に浮かびます。目が飛び出すケースが分かりやすいですが、これ以外にも体の表面にあるリンパ節が腫れることもあります(写真1~5)。見て分かる範囲のリンパ節に異常がない場合でも、腹腔内リンパ節やメスであれば子宮そのものが異常に腫大するケースがあります。お腹の中のリンパ節に異常がないかを確認するためにも、直腸検査は非常に重要です。もちろん、感染症のときでも免疫応答の結果リンパ節が腫れることはありますので、疑わしい症例では血液検査やリンパ節の生検を同時に行う必要があります。
リンパ腫を発症した場合には、基本的に血液中のリンパ球数が異常増殖するため血液中の白血球数も急増します。しかし、中には明らかにリンパ腫を発症しているのに白血球やリンパ球数がそれほど上昇しない(もしくは正常値の範囲内)症例も少なくありません。また、ウイルス感染の有無そのものを確認するために抗体価を調べる方法や発症リスクを判定するためのウイルス量を調べる検査もあります。数値を確認することも大切ですが、体表の入念な触診や直腸検査でリンパ節の大きさを十分に確認しておくことは大切です。ちなみに、腹腔内リンパ節を確認するときは背中側のリンパ節の腫大を見落とさないようにするために直腸粘膜を360℃撫でるように触ってください。
牛伝染性リンパ腫は体内のウイルス量がある程度増加したあとに発症するため、月齢が高いほど発症リスクは高まります。肥育牛であれば肥育後期、繁殖牛であれば複数回分娩している経産牛において「平熱で下痢もしていないのにエサを食べない」というような場合は、念のためリンパ節が大きくなっていないかを確認しておいた方がよいでしょう。

写真1:腫大した腸骨下リンパ節

写真2:眼球突出

写真3:腫大した下顎リンパ節

写真4:腫大した腹腔内リンパ節が神経を圧迫して続発した後肢ナックリング

写真5:腫大したリンパ節
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