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牛を枯らす

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2025年5月26日

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 急に暑くなったり、また涼しくなったり、気温の寒暖差が激しいですね。牛さんもみなさんもお身体気を付けましょう。
 子牛の場合、気温だけ見ると寒くもないのに、前日より気温が下がるとお腹を冷やしてしまうので、敷き料や、場合によっては腹巻きなどでお腹を冷やさないようにしてあげましょう。
 人間の子供だって、夏でもお腹を冷やして下痢することがあるのと同じです。

 さて、今日のお話は肥育牛の老化についてです。肥育農家では、「牛を枯らす」とか、「牛が枯れてきたから出荷していい頃合いだ」なんて事をよく耳にします。

 ただ、どこを見て「枯れた」と言っているのか、とても曖昧な方もいらっしゃるので整理しておきましょう。

 一言で言うと「枯れる」というのは、皮下脂肪の老化死滅を指す言葉です。
 実際、その指標として胸垂や陰嚢がちぢんでくることや、牛を触るというか押してみたときに、ブヨブヨした感じから、グッと反発するようになる、などを用います。これはいずれも皮下脂肪が死滅して薄くなった状態を指します。

 皮下脂肪が老化死滅すると、その脂肪細胞が蓄えていた油脂が、リンパなどによって移動してサシの細胞に蓄えられるので、効率的にサシを増やすことができます。
 ではなぜ皮下脂肪は老化死滅するのに、サシの脂肪細胞は元気なのでしょう。それは、細胞中のミトコンドリアの数が違うからです。
 脂肪細胞は、いざというときのエネルギーとなる脂肪のタンクです。この脂肪をエネルギーに変換するのがミトコンドリアなのですが、その際に「活性酸素」という老化物質をだしてしまいます。活性酸素が溜まると、細胞は老化壊死してしまうのですが、ミトコンドリアの数が多い皮下脂肪の方が、活性酸素が溜まりやすく、細胞が死滅することで、蓄えた脂肪がサシの細胞へと移動するのです。これをサシのあと伸びといいます。

 ですから、肥育期間が長い方がサシは乗るわけですが、皮下脂肪の死滅を促進させるためには、中期(サシも皮下脂肪も大きくなる時期)にしっかりと食い込ませておかなければならないのです。

 みなさんちの牛さんで、中期の食い込みが不足した子を見ると、いつまでもダラダラと食いが落ちなくて、枯れが遅い、と思いませんか?
 
 
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