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加地永理奈のコラム
膨らんだ胎子

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2024年8月28日

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死産で出てきた胎子の見た目がおかしい、と農家さんから見せていただいた写真です。
風船のように膨らんだ胎子だった、とのこと。

これは「気腫胎」という状態です。空気を含んで腫れあがった胎子という意味ですね。
難産や子宮捻転などの理由で胎子が出てこられないまま親牛の胎内で死亡し、そのまま長時間経過すると、このような状態になることがあります。
胎子が膨らんでしまう理由は、大腸菌やクロストリジウム属菌といった種類の腐敗菌です。腐敗菌が侵入することにより、胎子の皮下や腹腔内に多量のガスが貯留します。
すると胎子は膨張して産道を閉塞し、娩出がより一層困難になってしまいます。
直腸検査では腫れあがった子宮が触れ、産道に手を入れたら胎子が腫れあがっていて出てこられず、触るとブチブチという捻髪音がしたら気腫胎と判断できます。
産道から娩出しようと無理に牽引すると、胎子は脆くなっているためちぎれてしまいます。潤滑剤などを使いながら出すか、切りながら出すか(切胎)、帝王切開になります。

気腫胎の場合、母牛の状態にも注意が必要です。
腐敗菌から出る毒素を吸収してしまい、中毒症状、ショック状態から死に陥ることもあるためです。
胎子が気腫胎とわかったら、補液により循環血液量をあげたり、大腸菌やクロストリジウム属菌に効果のある抗生剤を使用したり、帝王切開では羊水で腹腔内を汚染しないように注意が必要です。
その後も抗生剤を続けたり、子宮洗浄をしたり、ケアをしっかりしてあげないと親牛の予後も悪くなってしまう病態です。
 
 
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