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池田哲平のコラム
牛の解剖102:膀胱(4)

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2012年6月1日

 体の中でここまでダイナミックに収縮と拡張が出来る臓器は膀胱以外にありません。ではどうしてここまで大きく形を変えられるのでしょうか?

 その秘密は、膀胱の粘膜の構造にあります。

 膀胱の粘膜上皮は非常に伸縮性のある特殊な上皮で出来ています。この上皮は“移行上皮”と呼ばれ、ウシの体の中には尿管、膀胱と尿道の一部にしかありません。

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 顕微鏡レベルで生き物の体を見てみると、通常、体の中のあらゆる上皮は一つ一つの細胞の形が決まっていてその細胞同士が規則正しくくっついているので、細胞が1層または数層重なった状態から薄くなったり分厚くなったりする事はありません。しかし、移行上皮は膀胱の収縮度合いに応じて細胞層の厚さや細胞の形を変える事ができるんです。膀胱に尿が溜まっていない収縮した状態の時は、上皮は細胞が何層にも重なった状態で分厚いんですが、尿が溜まってきて拡張してくると上皮は2~3層に変化して薄くなり、細胞の形も平べったくなります。
 この様に、上皮の見た目が大きく変わる(移行する)から移行上皮と呼ばれています。

 移行上皮にはこのような特徴があるので、膀胱は大きく形を変える事が出来るんですね。

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