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加地永理奈のコラム
皮下補液して良い種類

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2024年5月15日

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2025年卒獣医師採用について
(有)シェパード鹿児島本所(鹿児島県阿久根市)、栃木支所(栃木県那須塩原市)ともに獣医師を募集しております。
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脱水症状の改善や栄養補給を目的とした治療では、様々な補液を使います。生理食塩水、酢酸リンゲル、ブドウ糖、高張食塩水、重曹注、などは使用頻度が高く、コンサル先の農場さんでは常備薬として保管してもらっています。
最近では遠隔診療も普及し、畜主さんご自身で補液の処置まで行っていただくことも増えたと思います。そこで比較的安心してお願いしやすいのが皮下投与による補液です。静脈に留置針を刺して行うよりも簡易で、出血もありません。また、ゆっくり体に吸収されていくため、心臓や肺に急激な負荷をかけずにできます。

ただし様々ある補液の中で皮下補液が可能なのは、等張で等pHなものに限られます。等張とは、体液と浸透圧が同じという意味です。
添付文書上も皮下投与が可能な補液は「生理食塩水」「リンゲル液」です。皮下補液が可能なのはこの2つと覚えていて良いです。
ややこしいですが、「酢酸リンゲル液」「乳酸リンゲル液」はリンゲル液とは少し別物です。どちらも血管内で代謝されることを目的に作られているため、静脈内投与が基本ですが、等張なので獣医師判断で皮下投与することもあります。
ブドウ糖の補液はいくつか濃度があり、リンゲル液等に加えられていることもありますが、5%のブドウ糖なら等張等pHで、獣医師判断の上で皮下投与もできます。しかしブドウ糖の皮下投与で感染の報告があったり、不快感もあったりするらしく、基本的に静脈点滴するものと覚えていてください。

皮下投与による補液は、ゆっくりと吸収されて水分補給になることが目的です。そのため、脱水が重度だったり衰弱していたり、水分補給以外にアシドーシス補正やエネルギー補給を目的とするような場合には、静脈点滴による治療が必要です。

皮下補液の応用方法としては、高張食塩水の静脈注射を同時に組み合わせることで、皮下からの吸収を高める方法も有用です。

 
 
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