(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第776話:ハラール

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2024年4月23日

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2025年卒獣医師採用について
(有)シェパード鹿児島本所(鹿児島県阿久根市)、栃木支所(栃木県那須塩原市)ともに獣医師を募集しております。
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小生は日本の牛肉を世界に輸出することが非常に重要であるといつも思っています。特にイスラム圏の国々に牛肉を輸出することが、これから大きなポイントとなってくると考えています。イスラム圏のなかでも、人口が多く、平均年齢も若いインドネシアはかなり有力な国になります。

実はシェパードには過去に何人もインドネシアからの留学生が、診療実習に来てくださっています。今までにボゴール大学、ガジャ・マダ大学、アイルランガ大学などインドネシア最高レベルの大学の大学院生の方々がきてくださりました。さらには、いろいろな牧場でインドネシア人のスタッフと話す機会も多くあります。そのため、インドネシアについては色々と話を聞くことができます。貿易だけでなく、様々な面で今後日本とインドネシアの関係はますます重要になってくるのではないかと考えています。もちろん、皆さん和牛のお肉ははとてもおいしいと言ってくださっています。

そんな中、留学生の方がシェパードで「ハラール」の紹介をしてくださりました。一応、小生も「ハラール」については基本的なことは知っているつもりでした。ただし、あくまでも「専門の司祭の方がと畜にかかわり、お祈りをしながら特別な方法で行われるイスラム教独特のと畜方法」ぐらいの認識しかありませんでした。

そんな認識しかない小生。実際にインドネシアの現地で行われている本場「ハラール」の映像をみて、びっくり仰天してしまいました。

牛を寝かせた状態で一気に気管・食道・頸動脈・頚静脈を切ります。この時使用するのは刃渡り20cmほどの短刀です。結構短いです。そして、必ず一回ですべてを切らなくてはいけないとのことです。二度切りはご法度です。血液は牛が横たわったまま自然に出てくるのを待ちます。足をつりあげたりはしていませんでした。お祈りをしているようには見えなかったのですが、心の中で祈っているそうです。もちろん様々なハラールの方法があると思いますが、小生が見たものはなかなかワイルドで強烈でした。

映像をみて小生はすぐにピンときました。

これはある種の「切迫と殺」である、と。

「切迫と殺」とは屠場ではなく、法令で定められた緊急の場合に屠場以外でと殺することをいいます。一応、獣医さんはできるようなのですが、現在は法律で禁止されていると聞きます。もちろん小生も実施したことはありません。しかし、ひとりの先輩獣医師が昔実際に切迫と殺をして、食肉にしたことがあると体験談を話してくださいました。

今回ハラールを勉強して、外国と貿易を行うには、ただモノを売り買いするだけでなく、相手国の文化や伝統など様々なことをしっかりと理解して行わなければいけないと思った次第であります。学ばなくてはいけないことはたくさんあります。

今、日本は円安だから輸出するには絶好のチャンスです。ただ、ある国は自由貿易とか声高に言っていたような気がしたのですが、低関税枠が消化されたということでアッという間に関税を爆上げして輸入制限をかけちゃいました。いろいろ事情はあると思いますが、なんだかな~。やはりアジアを中心としたイスラム圏等への輸出が今後重要になってきます。
 
 
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