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池田哲平のコラム
牛の解剖97:腎臓(5)

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2012年4月20日

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 では腎臓ではどの様にしておしっこが作られているのでしょうか?

 以前のコラム(牛の解剖93)で腎臓に流れる血液は大型犬で一日に1,000~2,000Lだというお話をしました。この血液は腎臓の中にある「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる場所で濾過(ろか)されて、200~300Lのおしっこの元が出来ます。これを「原尿(げんにょう)」または「糸球体濾過液」と呼びます。糸球体での濾過は結構大きなフィルターを通すように行われるので、原尿中には、フィルターに引っかからなかった小さな物質で体に必要な成分がまだまだ沢山含まれています。つまり、原尿をそのまま体の外に出してしまうと、おしっこはものすごい量になりますし、体に必要なせっかくの栄養素を捨ててしまう事になります。
 これでは勿体無いということで、体には、この原尿中から体に必要な成分を再吸収する仕組みがあります。この再吸収は腎臓の中の「尿細管(にょうさいかん)」と呼ばれる場所で行われます。
 尿細管では、原尿中の水分を始め電解質(Na、K、Cl、Caなど)やブドウ糖、アミノ酸といった成分が再吸収されて、最終的に排泄されるおしっこの量は1~2L(大型犬の場合)になります。

 ちなみに・・・・・・、糸球体が原尿をつくる能力というのは腎臓の機能を評価する一つの指標になっていて、糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)と呼ばれています(でも、ウシの臨床現場ではほとんど使われていない・・・・・・)。

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