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前村達矢のコラム
よく使う抗生剤の耐性菌のはなし

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2022年5月27日

日頃、農場内で肺炎や腸炎、他にもいろいろな感染症が疑われる場合には抗生剤を使用することが多いと思います。

最近、「よく効く抗生剤だけど、この農場では効果が薄いんじゃないか」と思う機会が続いたので今回はその話をしようと思います。

一つ目は大腸菌性の乳房炎治療の牛に対してです。このケースの治療では、死滅した大腸菌から放出されるエンドトキシンと呼ばれる毒素をいかに防ぐかが鉄則になります。抗生剤によって、このエンドトキシンによるショック症状を引き起こしやすいものと、そうではないものがあるので気をつけなくてはいけません。僕らは大腸菌が疑われる乳房炎にはショックを起こすリスクの少ないキノロン系のバイトリルやビクタスを使うことが多いのですが、農場毎にどっちが効く効かないということがありました。

また、肺炎治療でも同じような事例があったんですよね。40℃を越える発熱を伴う子牛の肺炎だったのですが、比較的よく使うペニシリン、カナマイシンの合剤+抗炎症を初日に使用したところ、次の日も変わらず40℃でした(抗炎症まで使って熱が下がらないのは、体感結構珍しいんです)
あとになって、農場の方に話を聞くと、普段はペニシリンとチアンフェニコール系を1種類ずつ、つまり計2種類の抗生剤のみで治療が行われているようでした。

どちらのケースも、普段使用する薬剤に対する耐性菌がメインで感染した場合に起きているのでは、と推測しています。
使用する薬剤が限られていたりして治療効果が薄いなあと感じる農場は、よく出る病原体に対して有効な抗生剤はどれなのか調べ、使い方を一度見直すのも良いかなと思った次第でした。
 
 
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Bovine Papillomatosis 3 牛乳頭腫症3

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