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暑さもようやく峠を越えたようですね。ホッとしたのもつかの間、肥育牛では夏の間にたまりに貯まった暑熱ストレスの影響が密かに現れてきています。もっとも怖い(と僕が感じている)のは、夕方に「急に牛の息が荒くなって泡を吹いている」という往診依頼です。熱も上がっていますし、肺を聴診するとまるで肺炎のような湿性ラッセル音というものが聴取されます。 ここで肺炎と診断して抗生物質でも打とうものなら出荷規制が付いて、まずその牛さんは助かりません。これは実は「急性肺水腫」という状態なのです。主な原因としては暑熱ストレスで心臓が弱り、血液の循環が悪くなるために肺に水がしみ出してしまうことが挙げられます。つまり肺の病気というより「循環器系の夏ばて」ともいえる病気なのです。他にも暑熱ストレスで第一胃細菌のバランスが崩れ3’-メチルインドールという物質が作られてしまうことがあり、この物質が肺水腫の原因になる場合もあります。 残念ながら発症後に治癒させる有効な手だてはありません。点滴など打つと劇的に悪化する場合がありますし、酸素マスクを付けてやっても、肺自体が小さな泡で詰まっているので、なかなか効果がないのです。 (つづく) |