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松本大策のコラム
「肺炎の防除のお話6 消毒も効果的その1」

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2007年1月24日


 ウイルスを体の中で殺すのは、免疫抗体にしかできませんが(人間ではインフルエンザウイルス専用でタミフルとかリレンザというウイルスをやっつける薬があります)、ウイルスが牛さんにとりつく前にやっつける方法はあります。それが消毒です。
 消毒薬にもいろんな種類があります。一般的に農家さんでよく見かける物は、クリアキルやロンテクトなどの逆性石けん(塩化ジメチルジデシルアンモニウム剤)の仲間ですが、他にも口蹄疫ウイルスも殺すことのできるビルコンSやグルタZなどの強力なものもあります。一般的に消毒薬は有機物の混入に弱い(つまり、床などの消毒の時にウンコなどがあると効果が低下する)ので、まず消毒したい部分を水洗して乾かしたあとで消毒薬を使用します。
 しかし、汚水処理施設のない農場の場合、水洗後の排水の処理という問題があります。床面や天井面、壁、柱などを石灰乳でコーティングし、空中の細菌を細霧装置でたたき落とす、という方法が理想的だと思います。
床面や壁面の石灰消毒は、できるだけきれいに除糞やホコリを払ったあと、消石灰を水で溶かしてペンキみたいにした物を塗布するやり方です。石灰のアルカリや消毒力での殺菌効果だけでなく、石灰を塗りつけてばい菌を塗り固めてしまえば、石灰層の下にばい菌がいても悪さができないというわけです。
 石灰の層が厚さ1mmであれば、ばい菌にとってどれだけの厚さの壁になるかというと、もしもばい菌が人間の大きさだとしたら、厚さ2,000m程度(富士山の半分程度)の厚さの壁の下敷きになっているという計算になります。
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