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池田哲平のコラム
「脂肪壊死症を考える(8) 〜治療法は?その1〜」

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2011年6月3日

 脂肪壊死症に限らないことですが、病気の治療(病気へのアプローチの仕方)は大きく2種類に分けられます。それは「対症療法」と「原因療法」です。この両者の組み合わせによって、病気で苦しんでいる動物の状態を改善していきます。
 対症療法とは、“現在起きている症状に対する治療”ということで、病気の根本の原因による体の悲鳴(痛がる、咳をする、食欲が落ちる、涙を流す、など)を和らげたり取り除いたりすることです。脂肪壊死症の場合、脂肪壊死塊が消化管を締め付けることによる疝痛や食欲不振を改善することが対症療法になります。疝痛に対しては、プリフィニウム製剤などの合成鎮痙薬やフルニキシン製剤などのNSAIDを用いて、疼痛を緩和します。これにより食欲不振が改善される場合もあります。
 一方の原因療法とは、“病気の根本を解消するための治療”という意味です。肺炎であれば抗生物質で細菌を死滅させる、骨折したなら手術などで整復する、腫瘍がみつかったなら外科的に取り除く、などがこれにあたります。脂肪壊死症の場合、真の原因がわかっておらず、考えられている原因のうちの幾つかは治療の施しようがないものもあります。外科的に脂肪壊死塊を取り除くことも不可能です。ですがそんな中でも、薬剤投与や薬剤添加によって改善できるものがあり、治癒することも少なくないです。
 キーワードは「肝臓」と「抗酸化」です。

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