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池田哲平のコラム
「脂肪壊死症を考える(3) 〜あの塊は何者だ!?〜」

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2011年4月22日

 では、脂肪壊死症で消化管を狭窄する原因になっているあの硬い塊はいったい何なのでしょうか。
元をたどっていくと、前回でも言ったとおり脂肪組織が変性壊死したものなのですが、一つ分かりやすい別の言い方をすると、あれはまさに“石鹸”なのです。
 腹腔の脂肪組織は中性脂肪(トリアシルグリセロール)として飢餓時のエネルギー源となるものなのですが、この中性脂肪というものは“脂肪酸”と“グリセロール(グリセリン)”という2種類の成分から出来ているのです。普通に脂肪として存在している時にはこの2つの成分がしっかりくっついていて、脂肪本来の柔らかい弾力ある質感をしています。しかし、ひとたびこの脂肪組織があらゆる原因で壊死に陥ると、この両者がバラバラになってしまい、その片割れである脂肪酸がナトリウムやカルシウムと言った陽イオンとくっついてしまって、硬く変質してしまいます。
 そして、この「脂肪酸と陽イオンの結合物」とは、正に石鹸のことなのです。普段我々が使う石鹸も、動物や植物から油脂を抽出して、これにナトリウムなどを混ぜて作られているようです。
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