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池田哲平のコラム
「脂肪壊死症を考える(1) 〜非常に難敵〜」

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2011年4月8日

 前回お話しした通り、直腸検査は我々の日々の診療において非常によく行う検査手技の一つです。手袋一枚あれば(素手で行う先生もいるようですが…)、腹腔内や骨盤空内の臓器の状態が即座に分かる簡便さから、直腸検査は大動物獣医療では昔から用いられている検査技術です。
 前回まで長くにわたって消化管の解剖をしてきましたが、その締めくくりとして直腸検査で診断される消化管の病気の一つについて色々と考えてみたいと思います。

 採り上げる病気は”脂肪壊死症”です。

 私たちが診療するエリアを始め、多くの地域では“脂肪腫”とも言われる病気ですが、正直言って、非常に厄介な病気です。直腸検査を行ってこの病気が分かった時には、何とも言えない気分になります。戦う前から敗北感が漂う、というよりも戦うこともあまりしない病気で、人間医療の分野で言うと、非常に良くない悪性腫瘍が見つかった時の様な感覚に似ています。
 なぜ出来るのか?ウシはどういった症状を示すのか?どうやったら治るのか?分かっていないことも多い病気ですが、私見も入れながら紹介していきたいと思っています。
(つづく)

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