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池田哲平のコラム
「牛の解剖67: 空腸 ~最も長くてよく動く~」

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2010年12月24日

 空腸は十二指腸から続く小腸で、腸管の中で最も長い部分です。その長さは全腸管の半分以上を占めます。うねうねと折り重なるように何度も何度も蛇行しながら、円盤状の結腸を取り囲むように、腹腔の上の方から下に、さらに後ろの方に伸びていくのが特徴的です。実際の生きたウシのおなかの中では、狭いスペースに激しく折り重なるように押し込められていて、そこで腸管の蠕動運動が繰り返されています。実際、空腸は腸管の中で最もよく運動して動く部位なんです。
 じゃぁ、こんなに長くて細い管状のものが狭いところに無理やりみたいに入っていて、しかもそんなに動いたりして、絡まってしまうことはないのか?というと、全く無いとは言いませんが、そういうことが起こるのを強力に防ぐ仕組みがあるんです。それが、“腸間膜”というものです。これは、空腸に限らず腸管のあらゆるところに見られるものですが、腸管の運動を制限しすぎず、かつ、ある程度固定しておくためのもので、腸管同士をつないでいる薄い膜です。
 この「運動を制限しすぎずに固定する」というのが絶妙に出来ているんです。開腹手術の後に腸管をおなかの中に戻す時、とにかく中に入れることが大切で、その中での場所は腸管が自分たちで動いて自然と元に戻るんです!
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