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蓮沼浩のコラム
第596話:オーストラリア肉牛産業事情視察 その2

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2019年12月5日

 これから冬に本格的になってくるので、体調管理には十分気をつけたいですね。まずは基本中の基本である手洗いを徹底してみようと思っています!
 
 
≪ 旱魃(かんばつ) drought ≫

 意味 

「長期間降水がほとんどないため土壌が著しく乾燥し、農作物などに被害を及ぼす現象」

 オーストラリア視察で小生が一番大きな衝撃を受けたのは、この「旱魃」でした。今回オーストラリア北東部に位置するクイーンズランド州を視察してきたのですが、予想をはるかに超える酷さでした。とにかく目にする風景はどこも黄土色の土がもろに見える景色ばかり。緑の草はほとんどありません。時々緑の草をみるのですが、そこでは地下水をくみ上げて散水車や巨大なスプリンクラーで水を撒いています。
 オーストラリアは昔から時々旱魃に見まわれることはあったそうです。しかし、今回の旱魃は今までにないレベルのひどい旱魃であるといわれています。小生が行った所は4年近く旱魃が続いているとのことでした。

 あまりにも雨が降らずに乾燥しきっているので、山火事(bush fire)も頻発しています。そのために、コアラの生息地の約80%の森林が消失し、1000頭以上のコアラが死亡した可能性があるという報道もあります。地元のニュースでも毎日山火事のニュースをやっていました。森林火災の煙が街を覆っている映像もながれていました。とんでもないことになっています。山火事の原因が人為的なものではなく、乾燥した木の葉と木の葉が擦れて発火するという事も非常に驚きです。

 このような状態なので、当然畜産農家さんは粗飼料の確保が困難になります。今までは草がたくさんあるので広い放牧地に放牧していればよかったのですが、今は地下水をくみ上げて、その水を散布して牧草を育てたり、他の地域から牧草を買ってきたりしています。牛を育てる経費が爆発的に上がってしまい、どこの農場でも経営が圧迫されています。さらには経費がかかるだけでなく、地下水の取水制限まであります。地下水を勝手に沢山くみ上げてはいけないのです。最終的には牛をたくさん飼うことができないので、と畜して頭数を減らしている牧場も沢山あります。小生がお邪魔した一軒の農場では今までに240頭の繁殖雌牛がいたけど、50頭に減らしたと仰っていました。本来は300頭にしたかったそうですが、とてもじゃないけど経営できないとのことでした。最初にイメージしていたオーストラリアの状況と今回目の当たりにした状況は全く違うものでした。

 百聞は一見にしかず・・・・

 やはり実際に見ることは大事ですね。

今週の動画 「旱魃 drought」

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