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戸田克樹のコラム
第263話「遊んでるわけじゃないんですよ~」

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2019年12月4日

舌遊びってご存知ですか?
そうです、こういうやつです

「遊び」と言われるので、ヒマを持て余した牛が自分のベロで遊んでいるのかな~、と思いきや…。実はこれ、結構なストレスサインのひとつなんです。ネーミングは面白いですが、状況の深刻さがなかなか伝わらないのは問題ですね。

「もっと食べたいのに!もっと咬みたいのに!できないよー!!!!!」というメッセージを強烈に人間に発しています。粗飼料を食べると自然とよく噛みますよね。さらに反芻を引き起こすのも粗飼料ですので、それによりさらに噛むという行動が発現しやすくなります。粗飼料が少ない、質が良くないせいであまり食べない、といったことがあれば、牛さんの舌や顎の動きが本来より少なくなります。その行動発現抑制によるストレス(自然界であれば満足に行えるはずの行動が何らかの理由により抑えられてしまったことによるストレス)が舌をべろべろ回し続ける、あるいは柵を咬むといった代償行動(満たされない動作欲求を他のやり方で満たそうとする)になって現れます。

とくに繁殖母牛や肥育牛でこうした行動がみられると要注意です。
たとえば舌遊びを確認したら粗飼料を与えてみてください。きっと勢いよく食べにくるはずです。繁殖母牛では、ストレスは受胎率などの繁殖成績にダイレクトに影響します。肥育牛であれば粗飼料の不足は慢性的なルーメンアシドーシスにつながりますし、ストレスを受けると分泌されるコルチゾールが代謝機能を抑制しますので健全な増体を阻害します。

舌遊びは決して遊んでいるわけではありませんので、発見したら牛さんのメッセージを組みとってあげてください。

ちなみに、舌べろべろサイン以外にも、「敷料を食べる」というサインも粗飼料不足を表していますのでご注意を!

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