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池田哲平のコラム
牛の解剖39:唾液腺(4) ~粗飼料の重要性~

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2010年4月30日

 これまでに、ウシは反芻している時に唾液分泌量が増え、唾液がルーメンで緩衝剤として働き酸を中和するという話をしました。この“反芻”に最も影響を与えているものは粗飼料です。粗飼料は濃厚飼料に比べ硬い(粗剛性がある)ため、ウシの咀嚼と反芻を促します。粗飼料を給与することでウシの反芻は促進し、唾液分泌が盛んになり、アルカリ性の唾液がルーメンに流入します。これによってルーメン環境は整えられ、ルーメン内は過度に酸性にならずに済んでいるのです。
 また、粗飼料給与によって粗飼料を分解する微生物が活性化し、濃厚飼料を分解する微生物による急激な発酵を抑えてくれます。つまり、粗飼料を与えることはルーメン内発酵の安定化を図ることになるのです。
 逆に言うと、粗飼料が十分量給与されていないとウシは反芻しないので、その結果、ルーメン環境が不安定になって異常発酵が起こり、ルーメンアシドーシスやエンドトキシン症などになる危険性が高くなってしまいます。
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