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池田哲平のコラム
牛の解剖38:唾液腺(3) ~唾液量の調節~

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2010年4月23日

 唾液の分泌というのは常に同じペースで出続けているわけではありません。状況によってたくさん分泌されるときもあれば、殆ど分泌されないときもあります。その調整を行っているものは神経です。交感神経と副交感神経という二つの神経によって、唾液の分泌量は決められているのです。
 リラックスして反芻しているときや餌を食べているときには副交感神経が優位に働いて、唾液の分泌量は増えます。餌を目の前にして待てといわれている犬の口からよだれがダラダラ垂れている、なんて画は頭に浮かびやすいと思います。あの状態は交感神経よりも副交感神経が強く働いているのです。
 逆に交感神経が優位に働く状況では唾液の分泌量は少なくなり、それが長時間続くと口の渇きなどを感じ始めます。不安や恐怖といった強いストレスを感じる状況では交感神経が強く働きます。つまり、長時間の輸送などがこの状況に当てはまり、例えば、飲まず食わずで立ったまま長い距離を移動してきた導入牛たちは、新しい牛舎に到着するや否や水飲み場に殺到すると思います。これは長いあいだ輸送という強い不安やストレスを感じる状況下に置かれて、唾液の分泌量が低下して口が渇きを訴えた影響が大きいです。こんな子たちには、たっぷりの水と粗飼料を準備して、歓迎してあげてください。
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