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松本大策のコラム
点滴を温めていますか?

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2019年11月18日

 そろそろ今年も寒さが厳しくなっていきます。みなさんの牛さんは、病気などしていませんか。肺炎にせよ腸炎にせよ、脱水や栄養がとれないときの補助として点滴(正確には点滴管を使ってポトリ、ポトリと落とすのが点滴、点滴装置のない管で流すのはボーラスといって分けて考えます。両方をまとめていうときは、「補液」というのが正しいのですが、このお話では、どちらもみなさんが聞き慣れている「点滴」で通します。)をしますよね。

 今回はこの点滴の温度に関してです。

 みなさんの中に「成分献血」という献血をしたことがある方いらっしゃいますか?普通の献血は血液そのもの(全血)を分けてあげるのですが、「成分献血」というのは、血液中の血小板だけを献血する方法で、白血病の方など血小板が不足する患者さんのために血小板を分けてあげる方法です。
 その方法は、片方の腕の血管から血液を抜いてチューブで遠心分離機を通して血小板だけを回収して、残りの血液をもう片方の腕に戻すのです。僕自身はやったことがないのですが、成分献血をしたことのある友人が話してくれました。
 真夏の暑い日だったのに、部屋にはストーブが3個つけてあって「なんだこりゃ?」と思っていたら、成分献血を始めた途端に(正確に言うと、血小板を回収して血液をもう片方の腕に戻し始めた途端に)身体の芯から寒くて寒くてたまらなかったそうです。

 血小板を回収する間に血液が冷えてしまうため、身体の中に冷えた血液が戻されると、身体の中心から冷え切ってくるのでしょう。冷たい点滴を打つというのは、これと同じです。しかも、成分献血は健康そのものの人が血液を分けるために行うのですが、点滴は病気の牛さんに行うわけですから、ただでさえ弱っている牛さんが身体の芯から冷え切るのは拷問と同じです。

 特に冬場は、必ず体温より少し高いくらいに温めた補液剤を使いましょう。それと、点滴のチューブの中で冷えてしまうのを防ぐために、チューブの途中をバケツなどのお湯につけて再度温めながら点滴することも大切です。

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