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池田哲平のコラム
牛の解剖31:歯1 ~体の中で一番硬い~

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2010年3月6日

 舌によって口の中に運ばれた食物は、動物にとっての栄養となるために消化・吸収されます。その消化の部分で最初に重要な役割を果たすのが「歯」です。
 一本の歯はすべてが均一な成分で出来ているのではなく、いくつかの成分が層状に取り巻いて出来ています(エナメル質、象牙質、セメント質、歯髄)。その一番外側、つまり私たちが歯として認識して見えている部分は“エナメル質”と呼ばれています。歯医者さんなんかで見たり聞いたりしたことがありますよね。このエナメル質の一番の特徴は、何といっても硬いこと!実はエナメル質は生物の体の中一番硬い組織で、その硬さは一般的なナイフよりも硬く、石英(水晶)と同程度の硬さがあります。ですがその反面、一度欠けたり穴があいたりしても再生されないという弱さがあります。これは、エナメル質には細胞も血管もなく生物としての代謝が行われていないためです。人為的にフッ素を塗布すると再石灰化を促進することはできるようですが、生体自身の力でエナメル質を再生することは出来ないのです。
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