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原田みずきのコラム
発熱の話

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2019年10月25日

発熱の機序について説明する前に、牛の平熱と体温の調節方法についてご説明させていただきます。牛の平熱は子牛と成牛ですこし差があり、以下のとおりになります。

 子牛:38.5-39.4℃
 成牛:38.0-38.9℃

子牛の中でも哺乳期や離乳後、また季節や天候などでも差がありますが、基本的にはこの値の範囲内です。

次に、健康な状態の牛さんたちはどのようにして平熱を維持しているのかご説明していきます。

まず、牛は恒温動物です。恒温動物とは周囲の気温に左右されずに体温を一定に保つことができる動物のことです。人や犬猫など、ほとんどの哺乳類は恒温動物に分類されます。逆に周囲の温度により体温が変化する動物は変温動物と呼ばれます。こちらには亀や蛇などの爬虫類、魚や昆虫などが分類されます。変温動物は日光などから熱を取り入れることで、活動に必要な熱エネルギーを確保しています。晴れた日に亀が甲羅干しをしたり、蛇が道路で伸びていたり、蝶が羽を広げて止まったりしているのはこのためです。

一方恒温動物では活動に最適な体温(平熱)を保つため、外気温が高い場合は発汗などでの熱放散、低い場合はふるえなどでの熱産生を常に繰り返しています。平熱を保つため、体に熱放散と熱産生の司令を送っているのが間脳にある視床下部の体温調節中枢です。恒温動物は周りの環境に左右されず常に活動できるメリットがありますが、平熱を保つためにかなりのエネルギーを消費するため、変温動物と比べて数倍から数十倍のエネルギーを摂取しなくてはなりません。

次回のコラムでは、体温調節中枢の働きについて細かく説明していきます。

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