
|
|
写真の牛さんは、枠の隙間をくぐり抜けようとして挟まって動けなくなった状態で見つかった子牛です。 皮膚をすりむいていたので農場の方がヨーチンをかけてあげていました。僕が巡回したときは、枠に挟まってから1週間程度経過したあとでしたが、農場の方は「もうだいぶ良くなっている」と言って見せてくれたのです。 一枚目の写真では、表面のかさぶたを僕がはがそうとしている状態なので、出血が見られますが、その前はきれいにかさぶたになった状態で、もうかさぶたさえ剥がれれば治るかな、という感じに見える傷でした。でも、僕は以前このような、一見治り賭のように見えるかさぶたの下が深く広く腐っている症例に何度も出会っています。 そこで触診と打診をして確かめてから、やはり壊疽(嫌気性菌というばい菌が感染して腐った状態)だと確信してかさぶたを除去してみました。思った通り、かさぶたの下は壊疽を起こしていました。壊疽は知らないうちに深く広がって、場合によっては足一本腐ってしまうこともあるのです。 治療は、壊疽を起こした組織をすべて除去した後、毎日抗生物質と薬用炭末を混ぜたものをかけて(炭末は出血や浸出液を吸着し術創を保護します)あげます。表面を縫い合わせたり、包帯で覆ったりしてはいけません。嫌気性菌は空気にさらした方がよいのです。牛さんは、大きく開いた傷口でも、感染さえなければたいてい自然に治っていきます。この牛さんも2〜3週間で完治しました。 |