2019年9月2日 シェパードでは獣医師を募集しています * * * * * * * * * よくお受けする質問に、「牛が痩せていきます」というものがあります。僕の場合だと、太るのは食べた量と運動量の差、ということになりますが、若い牛さんの場合はもう少し複雑な状況が絡みます。 まず、子牛の場合でしたら、発熱性消耗性疾患。いわゆる肺炎の病中病後にどんどん痩せてガリガリになることがあります。しかし、そういう子牛が、意外にも「風邪引いたしな」みたいな感じで放置されているのです。これは、肺炎で免疫がバイ菌と戦った際に、活性酸素などを放出して、身体の細胞にも障害を与えていること、ビタミンAやD,Eなとが消耗されて、タンパク同化ホルモンの分泌が悪くなっていること、などが原因です。 次に繁殖のお母さん牛が、群れのなかで虐められているとき。弱いお母さんは痩せていきます。「そりゃ、強い牛に餌を食わせてもらえないからだろ?」という方がいらっしゃいますが、スタンチョンで仕切られていて、餌の量は一頭一頭調整されていても、やはり弱いお母さん牛は痩せていきます。原因は、ストレスで活性酸素が分泌されて、タンパク同化ホルモンの分泌を阻害するからです。今の若い人は知らないかもしれませんけど、中森明菜さんや宮沢りえちゃんも、恋人にフラれたショックで、ふっくら系の可愛かった少女がガリガリに痩せちゃったのも、ストレスによりタンパク同化ホルモンが減少した影響でしょう。 肥育牛でパッと思い付くのは、中期に、餌は食べるけど痩せてくる、というものと、下痢して急に痩せてきた、というものです。肥育中期に餌は食べるけど痩せてきた、というタイプは、ビタミンコントロールを実施している農場で、ビタミンの欠乏がおこり、タンパク同化ホルモンが減少したタイプです。 下痢して、急激に痩せてきた、というタイプて最も疑うのは「腸管膜脂肪壊死症」です。直腸検査だけでは、深部のものは触れないので、外部からの圧診などによる診断が大切です。 さて、これだけ並べると、「そんじゃどーやって治療すればいいんだよ!」とお叱りを受けそうなので、脂肪壊死は別の回にまわすとして、他のやつの対処について書きます。 ストレスを回避する方法はこれまでもお話ししてきました。(また機会を見つけて書きますね。)それ以外の対処は、ほぼほぼV4処置で改善します。試しにやってみてください(^^) 前の記事 群内で弱い母牛のケア | 次の記事 熱中症処置の意外な落とし穴 |