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笹崎直哉のコラム
親の初乳を飲ませるときに

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2019年8月27日

シェパードでは獣医師を募集しています
 シェパードでは、関東地区の獣医療が不足している地域を支援するため、栃木県那須塩原市に支所を設けることにいたしました。2020年の4月に開設する予定です。経験、未経験は問いません。シェパードで研修後、現地勤務となります。募集内容は こちら から。

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 ある日「今朝産まれた子牛が親の初乳飲まなくて元気がない」とのことで往診に向かいました。この牧場は分娩後はしばらく親付けして、その後ハッチへ移動し、人工哺育にシフトします。なので親付けの期間はお母さんの初乳、常乳をしっかり飲んで基礎体力をつけていきたいところです。到着すると、すでに子牛には人工の初乳製剤を飲ませていたのですが、やはり母乳は飲めていない様子。すぐさま母乳を搾って飲ませましょうと提案し、搾乳を行いました。乳房の硬結感もなく、各分房の射乳を確認し安心したところでしたが、ある異変に気付きました。

 あれ、血が混ざっている、、、。

 初乳の色といえば乳白色にやや黄色が混じる程度。今回は赤紫色になっており、いわゆる血乳になっておりました。これを確認後、農家さんには今日から母子分離をして人工哺育をするようにお願いしました。

 血乳はホルスタインなど乳用牛で勉強した経験があります。しかし黒毛和種の牛さんでは初めてです。血乳の原因を考えてみると乳房炎によるもの、外傷や打撲によるもの、分娩後の生理的なものの3つに分かれます。生理的なものとしては乳腺内の毛細血管が拡張し、もろくなった際に破綻し、出血を起こしてしまうことが考えられます。お母さん牛は発熱もなく、乳房全体を視診、触診しても外傷や打撲等の形跡はありません。しかし、今回お話した3つの原因によるものに対処できるようビタミンAD3E、ペニシリンそれから消炎剤として水性デキサメサゾンの投与を行いました。なおペニシリンと水性デキサメサゾンは投与を続けました。感染性のものであれば、乾乳期の衛生環境が関係しますので、農家さんには分娩前の部屋の状態をよく確認して、必要であれば消毒を実施するようにお願いしました。

 初乳の質について普段から意識が薄くなっているところでしたので、非常に勉強になりました。

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