(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第578話:BRDC病原体の検査について その4

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2019年8月1日

 先日小生の住む出水市で花火大会があったので、子供をつれて軽い気持ちで本当に久しぶりに見に行ってきました。すると・・・・今回の花火大会はいつもの花火大会ではなく、レーザービームと音楽と花火が合わさった新しい形の花火大会に変身していました。とても斬新であり、これからの時代を感じる花火大会でした。これを見たらもう普通の花火大会は見られないと本気で思うぐらい素晴らしかったですね~~~~。どこの世界も進化していますね。
 
 
 今回摘発されたPI牛の履歴を確認すると、県外から妊娠牛として導入されてきた母牛の子牛であったことがわかりました。BVD業界?で言う、いわゆる「トロイの子牛」になっていました。この子牛の治療歴を調べると、肺炎、中耳炎という診断で小生を含め、結構シェパードの獣医師が治療していました。ひどい発育不良でもありました。この子牛が外部導入の妊娠牛から生まれたことをしらなかったので、PI牛の可能性を全く意識していませんでした。今回の検査で偶然発見されたので本当に、本当に良かったです。たまたま発育も悪かったので別飼いしていたため、感染が広がりにくかったのも幸いしました。そして、もう一頭のBVDⅠウイルスを検出した子牛はいわゆるTI(transient infection:一過性感染)の状態だったことが判明しました。おそらく、このPI牛の摘発が行われる前、呼吸器病が牧場に広がって治療がおおかったので、TIの子牛が結構発生していた可能性があります。当時は寒さが厳しくなってきていたので、そのために呼吸器病が増えてきたのであろうという認識だったと思います。

 小生は検査というものが本当に重要だといつも思っています。現場で使用できる検査キットというものは、とても重宝します。下痢の検査キットなども農家さんと一緒に見たりして、非常に重宝しています。もちろん顕微鏡の検査や血液検査もしかり。しかし、BVDに関してはこの検査のハードルが非常に高いことが難点になります。乳牛であれば、バルクタンクから牛乳を採取してスクリーニング検査ができるのですが、肉用牛の場合は搾乳するわけではないので、そのような検査ができません。結果として、PI牛を摘発するためには一頭一頭採血を行い、血清分離をし、全血も用意し、それを専門の検査センターに郵送する必要があります。この「採血」というところがネックとなり、農場で簡単にスクリーニング検査や着地検査等を実施できないのです。
 しかし、今回実施した「GenelyzerTMⅡ」の検査では、鼻腔スワブからBVDウイルスを検出しています。これは、BVD対策をするうえでメチャクチャ凄い画期的なことだと思います。PI牛は全身から大量のウイルスを環境中にまき散らします。糞便、尿、汗、涎、鼻水などありとあらゆるところからウイルスをまき散らすと言われています。しかし、今までの検査では主に血液と乳汁からしか検査することが出来ない状態でした。ここに鼻腔スワブによる検査が加わることになります。現在新しく耳片採取キットによる抗原エライザを用いた方法も行われていますが、「GenelyzerTMⅡ」の検査では普段からやり慣れている鼻腔スワブを取って、検査センターに送るだけなので簡単に検査を実施できます。獣医師の指導のもと、農場の方でも採材を実施できます。
 今回偶然小生の担当エリアでこの検査を用いてPI牛を摘発しました。まだ色々改善する点はあるかと思いますが、これから大いに期待できる検査方法だと小生は思っています。次回はさらに突っ込んだ、鼻腔スワブからBVDウイルスを検査することの重要性についてお話ししますね!

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