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伏見康生のコラム
「NO.141 「しっぽばさみ」」

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2011年6月22日

 毎日毎日、診察をしていると汚れます!診療獣医師になりたてほやほやの頃などは、それはそれはド派手に汚れて事務所に帰ってきて、「それはまだまだ青いからだ。技術の上達と共に汚れなくなっていくものだ。」と言われていたような気がします。
 最近はあまり汚れずに診療できるようになったのですが、なかなか避けられぬ汚れもあります。それを心のダメージの大きさで順位付けし、今日はベスト3を発表したいと思います。

第三位「直検中に糞射を食らう」
 直検をしていると、嫌がった牛が努責を強め、空気と共に糞の散弾を発射。もちろん直検中ですから逃げられません(必中)!オナラとウンチを上半身に同時に喰らい、思わず何も効果はないのに呼吸を止めてしまいます。

第二位「鼻水を顔面にたっぷり浴びる」
 静脈注射しようとしたときに、牛の鼻息で勢い良く飛び出した鼻水が顔面にジャストミート。もちろん静脈注射中ですから逃げられません(必中)!あまりのショックに注射器が落ちそうになります。

第一位「水下痢をしっぽで全身に浴びる」
 水下痢をしている牛のしっぽが明らかにずぶ濡れになっている・・・おそるそる汚れていない部分を掴み、体温計を挿入・・・どきどき・・・少し手は汚れたものの、何とか検温完了。次は左右の腹部の聴診・・・おどおど・・・はうあっ!!尻尾に動きがああ!!ぶんっ!!びちゃちゃっ!!・・・ちーん・・・ほぼ全方位に飛ぶ奥義ですが、近距離で食らうと特に最悪です。どこにウンチが付いたのか、付いていないのか。どこかが臭い。ちょっと気分が落ち込む。その後ふつふつと怒りが湧きあがる。はっ、治療中だった。と、心の中はとても忙しくなります。これも逃げられません(高確率)。

 そこで、こんなものを作りました。ホームセンターで購入した中くらいサイズの強力なクランプ。それに点滴のチューブを紐として再利用。水下痢を撒き散らす肥育牛の頭部をチューブで引き解け結びに、しっぽをグいっと引いてクランプで挟む。こうして私は水下痢の恐怖から開放されました。
 ・・・とはいうものの、本当はあんまり水下痢の時には使っておらず、母牛の腟検査、子宮薬注などのときに一番使っています。ロープで結んでも一緒なんですけどね。

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